maverick

シー・ハルク:ザ・アトーニーのmaverickのレビュー・感想・評価

4.3
マーベル・スタジオが製作するテレビドラマシリーズ。2022年8月18日にDisney+にて配信され、全9話で構成される。マーベル・シネマティック・ユニバースに属するドラマシリーズの7番目の作品。


これまでで一番の衝撃作。賛否両論な感想もうなずける。それが大きく分かれるのも最終話の描き方だろう。あの演出はとにかく衝撃的だった。これまで楽しんでいた人が最後に大激怒というのも多数見受けられる。自分としては逆で、最後のあの演出はサプライズすぎて大爆笑だった。確かに今後の多作品への影響を考えると不安もなくはないが、これはこれで笑って受け流すくらいの受け止め方で良いのではないかと思う。こういうお遊び要素があっても問題ないんじゃないかな。

実はこの『シー・ハルク』、これまでで一番の中だるみを感じた作品だった。最初こそハルクが登場してめちゃくちゃテンションも上がったのだが、そこからは単調で盛り上がりに欠けた。CGの質感もイマイチでそこも気になった。これまでで一番MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品らしくないかもと感じて、そこが自分の中のモヤモヤ感に繋がったのだ。だが本作の意義は、主人公のジェニファー・ウォルターズを主軸とした日常ドラマであり、さらに彼女の弁護士としての立ち位置を使用した法廷ドラマなのだと気付いた。スーパーヒーロー案件を解決するのがスーパーヒロインたる彼女という面白さであり、そこが何とも斬新。ジェニファーは弁護士としてもスーパーヒーローとしても苦悩するが、その描き方もこれまでの他作品とは違ってコミカルだった。スーパーヒーロー作品でありつつも、どちらかというと女性が主人公のラブコメ海外ドラマな作風。そしてマーベル作品としての要素も、おまけで収録された短編ものの『マーベル・ワンショット』のような空気感なのだと察した。そこを意識して観るようになると、これまでのモヤモヤした気持ちもなく楽しめるようになった。

製作陣もここは意識して作っているのだと思う。シー・ハルクのキャラクターとしての立ち位置を存分に活かし、これまでとは違う作品性を打ち出したかったのだろう。シー・ハルクは第4の壁を越える能力の持ち主であり、デッドプールと同じキャラクター性。本作が企画された段階で、すでにぶっ飛んだ内容を目指していたはずだ。デッドプールもMCUに合流することがすでに決まっており、その統合性を意識しているようにも思える。デッドプール登場の前座を務めた役割でもあるのだろう。

途中マンネリし続けながらも脱落せずに鑑賞出来たのは、主人公のジェニファーのキャラクターが魅力的だったおかげである。ハルクと同じ能力を有するスーパーヒーローであり、有能な弁護士という成功された存在でありながら、恋愛が上手くいかなくてすぐにへこたれる情けなさがなんとも愛らしい。演じるタチアナ・マスラニーがまた魅力的な女優であり、セクシーさとコミカルさに大いに魅了される。安定した演技で作品を引っ張り、彼女の魅力で本作は十分成り立っていた。話がイマイチであっても、彼女を毎話観たいという気持ちにさせた。マーベル作品の主人公としての貫禄はすでに十分。ジェニファーというキャラクターを生み出したという部分だけでも本作は価値がある。

他作品との繋がりは小ネタも含めるとかなりのもので、そこはファンとしては非常に嬉しかった。さらっと重要なことを盛り込んでいたりと侮れない。ハルクの登場以上のインパクトだったのが、あのキャラクターの参戦。ジェニファー自身とも確かに繋がりの深い人物。満を持しての彼の参戦は非常に熱かった。世界が広がってゆく。


清涼剤のように、肩の力を抜いてリフレッシュするための作品だったように思える。あれこれ考察しすぎて過熱するのがファンだが、難しいこと考えずにお気楽にただ楽しむのも必要だと感じる。少なくとも自分は本作がマーベル・シネマティック・ユニバースの崩壊には繋がらないと思う。暗くなりすぎていた世界観をあっという間に明るくしてくれた本作の存在は有難い。次は、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で、またぐっと引き締まると思う。本作で登場したシー・ハルク=ジェニファーというキャラクターの次の登場も非常に楽しみ。楽しみは無限大だな。
maverick

maverick