ももすけ

最愛のももすけのネタバレレビュー・内容・結末

最愛(2021年製作のドラマ)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ラブストーリー要素、サスペンス要素、すごくいい感じにミックスされて、引っかかるとこ何もなしに、キャスト全員の紹介が終わったところで第一話終了。見事な手腕としか言いようがない。来週が楽しみ。




と、感じたのだけど、2話くらいで様相が変わった。完走はしたけど、正直、あの一話の圧倒的な力があって、なぜ自分の中で急失速したのか、考えてみる。

「切なさ」を狙った演出が、私にとっては狙い過ぎに見えて、思わせぶりに過ぎて。それと、その演出にそぐわない、中身。
良すぎる音楽。
ノスタルジーで美しすぎる画面。
スローモーションの多用。

いろいろなところで、「切ない」「最愛の人を守るの尊い」の大合唱で、こんなこと言うのちょっと心苦しいけど。

私としては、本来申し出るべきことがらを、一時の感情で隠ぺいし、良かれと思ってとった行動が作らずとも良い不幸の輪を拡げてしまった、哀しくも愚かな人たちの物語と感じた。

「なんと愚かな…」と感じたが、切なさは無かった。
思わせぶり演出に、かぶせられる宇多田ヒカルの歌声が、全てを覆い隠すように切ない(これはマジで切ない)のが、なんだかなおさら白々しく感じる。

ミステリとしてもひねりがなく、謎解き要素より、ああでもないこうでもないと犯人を当てはめるパズル的構造。
新事実発見により、あっさり犯人が特定されるけど、「あいつしかおらんよね?」状態で、意外性もない。


多分、吉高由里子さんと松下洸平さんのラブきゅんな風情や、井浦新さんのシブく深い愛のありさまを、みんな見たかったのかな。

白川郷の美しい風景の中、めっちゃいい劇バンがかかり、それだけで涙が出そうなシーンで、やにわにヒロインが札束取り出して「……逃げて……それでまたいつか会いに来て」

って、いや、それでいいの?弟、「もう逃げたくない」って言ってるやん?弟一生逃亡者にすんの?それで危険犯してまた会いに来いとか、どんだけ自己中なの?

そういう世界観なんだよね。

私にとって、このドラマの目玉は「もう逃げたくない」と罪に向き合った優こと高橋文哉くんの演技。ちょっと前までゾンビ先生の下で安い感じの演技させられてて心配していたけど、素晴らしい成長ぶり。ドラマの内容的にも、唯一の良心と言っていい。

それに比べて、ヒロインは言うに及ばず、薬師丸ひろ子演じる母親とか、ミッチーとか、あれは罪に向き合ってるって言わないよね。

なんか、そういうゴマカシみたいなことを、愛とかいう言葉でにごすの、すごい不満だった。

田中みなみの役のこと不憫すぎて、考えるだけで鬱になる。

悪いのはクズ男ってみんな言うし、まあ、当たってはいるけど、誰の愛が重くて、守られるべきで、誰の愛が軽くて踏み躙られても構わない、なんて、決められないはず。

それであれば、クズ男の父を、私利私欲(自己の愛を守るとはそういうことだ)で殺すのはやはりクズだ。

近年稀に見るクズばっかのドラマだなと。
極上の技術力と極上の演出、極上の俳優ばかりが集結し、素晴らしい演技を繰り広げて、何言っちゃってんの?状態だったなと。私には合わなかった。
ももすけ

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