ak

最愛のakのレビュー・感想・評価

最愛(2021年製作のドラマ)
2.6
この作品のテーマは女性社長の生きづらさだと思いながら見ていた。今年の『大豆田とわ子と三人の元夫』とも共鳴する作品であり、 塚原監督と新井Pらしい作品であった。


梨央社長は若くして社長になっており、誰もが羨むであろう成功者である。実際には、加瀬が最終回に橘しおりに「お前が思ってるほど、何も持っていない(このような感じの台詞)」と言っていたのが象徴しているように苦労しているのだ。それは優に怪我させた事、渡辺康介の件、新しい家族の事、社長業や薬の事などが挙げられる。8話で"強くならんと"と言っていた気がするが、薬が認可されるために必死で努力していた。
その彼女を助けたのが二人の男であった。大ちゃんは大学時代の経験から警察官になった。警察官としての立場から事件を解決する事や、親しい関係として励ます事で梨央を救おうとする。一方で、加瀬は弁護士として、家族として梨央を守ろうとする。最終回で彼女を救おうとするあまり罪を犯していたことが明らかになる。加瀬と梨央は"家族"ではない。しかし、そこにはとても強い繋がりが築かれており、最終回ではそれが一層表現されていた。梓社長が9話で「誰かの正義は誰かの悪」と言っていたが、この二人の愛はまさしくこの通りになっている。
加瀬さんが倒した三人をフェミニズム的視点で捉えてみると面白い。渡辺康介は言うまでもなく性犯罪者である。渡辺昭はただちょっかいを出しただけ、女性がいけないなどセクハラおじさんだ。橘しおりは成功している女性を引き摺り下ろそうとする女性と言ったところか。努力している女性の敵は大体この三つといったところだろう。梨央社長は彼女らにどう対処することができなく、加瀬が対処した。これが表しているのはまだまだ女性が男性のように活躍するのは難しいと言う事だろう。

作品の演出では女性社長ということもあり、格差的なテーマを感じた。岐阜と東京の対比、高級な食事と庶民の食事の対比や会社でのエレベーター、大ちゃんと梨央が見つめ会うシーンで出てくる橋、最終回でのショッピングモールなど上下のモチーフも多かったような気がした。
ak

ak