ファックマン

ザ・テラー シーズン1のファックマンのレビュー・感想・評価

ザ・テラー シーズン1(2018年製作のドラマ)
4.0
極力ネタバレを避けつつ感想書くの難しいなあ…どうしようか…

えっと、まず、陳腐な爆音演出でドッキリビックリした回数で作品の怖さを判定する人向けの作品ではないですとにかく!そういう人は『Five Nights at Freddy's』の最新作でも遊んでて、どうぞ


実際の遭難事件がベースで史実の要素を多く含みながらも、超自然的ホラー要素を加えて描く本作。こういうノンフィクションベースの完全なフィクションって好きなジャンルながらも、意外とハリウッドが大金かけてやるようなジャンルではないよなあと思い、物珍しさで観てみたけど、滅茶苦茶好きだった!…とこは滅茶苦茶好きだったけど、途中から浮上する欠点があんまりにも足を引きずってて、結局「傑作まであと一歩…あと一歩だったのに…」という感想に落ち着く


まず、本作一番の強みは史実要素でも、ホラー要素でもなく、キャラクター。ちゃんと台詞と名前がある、いわゆる「出オチではない」キャラクターだけでもアホみたいに多い本作だが、アニメとかでよく見る表面上だけの一次元的なキャラ付けに頼らずにその殆どがどういうキャラクターなのか、観終わる頃には大体理解出来るって凄まじい功績だと思う。現実の人間同様、完璧からは程遠く、長所も短所もある、信じられる「リアル」なキャラクターなのも流石(一部例外アリだけど、それは後ほど愚痴る)。ただでさえ髭の白人か髭じゃない白人かしかいないのに、全員似たような制服着てるし、その上防寒具着ている時は数少ない見分け要素だった髪すら隠れるせいで最初は(知ってる俳優が演じてるの以外は)どれが誰なのか理解するのに苦労するけど、むしろそれでも最後にはキャラクターたちが印象に残るということは、それだけキャラクター描写に成功しているということ。極限の状況下に置かれたキャラクターに焦点を当ててるが故、キャラクターに愛着が沸く。キャラクターに愛着が沸くと極力酷い目に遭って欲しくないと願う。そういう時こそホラー要素は輝く

…と、絶賛するくらいキャラクター描写が強い本作だけど、一番かつ数少ない問題点も同じくキャラクター描写だったりする。終盤に差し掛かる頃に、とあるキャラクターが急に世界征服の野望を抱えていそうなテンプレヴィランへと突然変異してしまう。今まで丁寧に築き上げてきた、信じられる様なキャラクターを主軸にした物語に水を差すなんてもんじゃない。リアルなキャラクターたちの中で、一人だけヴィラン描写がまだ下手だった頃のMCUヴィランがいるようなもん。しかもそのキャラクター、終盤に差し掛かるまで全くそんな感じじゃなかったのよ…気が狂ってそうなったんじゃない?と思うかもしれないけど違うよ多分。気が狂ったというより、突然007の悪役の亡霊に憑依されてしまったって感じだった。なにが謎って、終盤で話全体のクオリティーがガクッと落ちるわけじゃなくて、急にお粗末になるのはそのキャラクターとそのキャラクター関連だけなんだよね…実際、終盤でも好きなとこ、よく出来てると思うとこはそれまで同様にいくらでもある。だからこそ…だからこそ「どうして…」ってなる


ホラーはホラーでも、ジャンル分けするとしたらパニックホラーの部類だからドキドキ…ハラハラ…するシーンは結構あってもギャーーーーッ!!!ってなるシーンは多分ないよ。実際、明らかにフィクションのホラー要素よりも、過酷すぎる自然環境や食糧難、極限状態のストレスにやられて狂っていく人間など、実際の探検隊が経験したであろう(文字通り)リアルな恐怖の方が効果的かもしれない

そこから話が繋がるけど、一方の超自然的ホラーの、肝心の「超自然的要素」…観てる時は気にならなかったけど、考えれば考えるほど「いらなくね?」ってなる。というのも、本作の「脅威」の超自然的要素、滅茶苦茶地味なんよ。こういうリアリティに拘った作品の場合、あんまりにもブッ飛んだ要素を入れると没入感を台無しにする可能性があるから、地味なことは必ずしも悪くないことなんだけど…本作の超自然的な脅威、現実に実在する似たような脅威とそのまま入れ替えても殆ど変わらないと思う。むしろ、現実世界に実在する脅威の方が、過酷な自然や極限状態における人間の精神の脆さ同様、「自分にもあり得るかもしれない」という恐怖を植え付けられるため、そっちの方が効果的だったんじゃないかな?あるいは、これだったらもう少しだけファンタジー方面を強くしてもよかったんじゃないかとも…


ネタバレをなるべく回避した結果、意味不明な怪文続きになってしまったけど、観終わったらどこの話をしてるか多分分かると思うよ多分

長所は凄まじく力強く、終盤で急に躓きはじめなかったら確実に星5はあげてたってくらい好きだった。だからこそ、本ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ当に惜しい作品だった。でも、最初は殆ど見分けがつかなかった髭面or髭面じゃない白人たちが、観終わる頃には彼らの顔、性格、希望/野望、そして生き様が心に刻まれていたという経験を考えると、観たことは決して後悔してない
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