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離婚しようよのmaoのレビュー・感想・評価

離婚しようよ(2023年製作のドラマ)
3.6
二世議員の夫・東海林大志とブレイク中の俳優・黒澤ゆいはおしどり夫婦として世間から認知されている。しかし実際は、世間体や実家からのプレッシャー、スポンサー契約に縛られ、冷えきった関係を隠しているだけのふたりだった。ついに離婚に向け走り出した東海林夫妻がたどりつく未来とは?


久しぶりに錦戸亮が映像作品に戻ってくるということで、配信を楽しみにしていたこの作品。

政界、芸能界、スキャンダル、離婚、そして総選挙。黒く重たいテーマだらけだが、さすがクドカン×大石静の共同脚本。しかもメインのふたり+恭二(錦戸亮)はあて書き。通りでしっくりきていたわけだ。

「巫女ちゃん」「君の那覇」などのパロディにクスッとしてしまう。


亡き父の地盤を継ぐ大志は、政治への意欲がまるでない。能天気だし、漢字も読めない。女好きという短所が何度も何度もトラブルを巻き起こし、秘書の早乙女をブチ切れさせる。ただ、地元愛媛への愛だけはある。

非常にちゃらんぽらんだが、「当選しないのなら生まれてきた意味がない」とまで言われる家のひとり息子として、政治家になるために甘く甘く囲われて育てられた彼には、おそらく考える力が備わらなかったのだろうな。それも一種の教育虐待だ。

ゆいはあて書きだというのがいちばん納得できた。仲里依紗の感情が弾けるイメージとよく合っていた。勿論衣装は物足りなかっただろうが、俳優役ということもあり、いろいろな姿を見られて楽しい。

愛媛が舞台ということで、済美高校出身で一躍有名になったティモンディのふたりも出演。出ることを知らずに観ていたので、あれ?あれあれ??と思わず早戻ししてしまった。高岸くんはちょこちょこドラマに出ているが、なんと今回はチンピラ役。良い采配である。一方、前田くんのドラマ出演はかなり珍しい。ファンがキャーキャー言いそうな役ではあった。

個人的に大好きだったのが、秘書の早乙女。

「自分は坊ちゃんではなく、先代に仕えている」「先代のご子息だから、命を懸けて守る」と言うだけあって、地元愛を除けば政治家としてはまったく無能である大志に常にイライラしている。

ナレーションも早乙女が担い、彼の心の声が頻繁に聴けるのだけど、面白い。気苦労が多そうではある。

同じように二世候補者に秘書が振り回される作品だと、宮沢りえと窪田正孝の「決戦は日曜日」が記憶に新しい。宮沢りえ演じる候補者も漢字が苦手で、「各々」を「カクカク」と読んでいたな、、どんな政界作品を観ていても、秘書というのはある程度狂った人でなければ勤まらないと思う。議員秘書をしていた友人も、パワハラで退職したし。


この作品は、早乙女以外の人間にモヤッとするようにできている(と、勝手に思っている)。大志にも、ゆいにも、恭二にも、互いの母親にも、モヤッ、、イラッ、、とする部分がかなりある。

しかし、終盤になると彼らのことも少しずつ愛おしく思えてくる。

8話の序盤、愛媛愛ゆえに他の候補者を言い負かした大志のさっぱりとした顔には胸のすくような思いがしたし、色気は大いに認めるが性格が好きではなかった恭二にも、どんどん愛着が湧いていく。

大志とゆい、それぞれの母がまったくベクトルの違う毒親で苦しかった。

確かに面白いが、「あ〜面白かった!」と大きな声で言えるようなドラマではない。

夫婦の話。そして選挙の話。「選挙に参加しようとする一般の若者」はあまり描かれなかったが、若い世代がこの作品を観ることで、少しでも投票率が上がるといい。泣いちゃった解散、現実でもしてほしいけどな、もはや。

かしこみかしこみ〜🙏🏻
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