時々

雪国 -SNOW COUNTRY-の時々のレビュー・感想・評価

雪国 -SNOW COUNTRY-(2022年製作のドラマ)
4.5
「貴方、私を笑ってるんでしょう。心の中で笑ってるんだわ。後になってきっと笑うんだわ」という言葉は、主人公島村を突き抜けて、ドラマを見ている私に刺さる。
小説やドラマの登場人物の生き方を読者や視聴者は安全な高みから、ああだこうだと言う。

「徒労」。雪は降っては融ける。一方、雪国の人が道の雪をかいてもまた道は雪に埋もる。人の営みは全て徒労と思えば徒労。
生きる人は目の前のことに必死、結果から見れば徒労であっても。それを眺める人には徒労がやるせない。雪景色の中に立ちつくす姿、炎に照らされる表情が美しいので、徒労がやるせない。

島村は観もしない西洋舞踊の評論を書くような頭でっかちの人だから、生きている実感、手応えを失いかけている。生きる中に違和感。「マトリックス」の覚醒前のネオや「トゥルーマンショー」の様に生きる手触りを失って、他人の中に発見している。しかし、他人の徒労を自らに引き受けはしない。旅先のことだから。時々記憶の底から引き出して心うずかせる。薄情ではあるが心うずかせる。

雪景色の画が美しく、宿の室内の佇まいも落ち着く。駅舎の迎えの場面の哀感も美しい。出演者のまとう色気がいい。登場人物の存在感は皆印象的だが、特に奈緒さんと森田望智さんの表裏になる女性二人がいい。奈緒さんの日舞と長唄「勧進帳」は時間限られるだろうにどれだけ練習したのか大したもの。
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