Kaji

Pachinko パチンコのKajiのレビュー・感想・評価

Pachinko パチンコ(2022年製作のドラマ)
4.0
原作未読です。

ドラマは3・4世代を往来しつつ在日韓国人という生き方を選んだ女性にフォーカスしており、時代やジェンダー、移民家族の姿と差別をきっちり描きこんでいる太い作品でした。

映像もすごかったし、衣装や生活形態の時代考証もかなり緻密だったと思います。
ベースのリアリティがエピソードを立体的にしつつ、一代史ドラマの仕立てとして素晴らしかった。
1だけで終わるの?と最終話が気になっていたのですがシーズン2決定の報があった後に1の最終話でした。

「おしん」的なのだったら残念だな、と思っていたのですが過酷な状況で強くなった女性ではなくて、生来持っていたタフさでサバイブする女性が描かれていたところが好感。
男子像も生きるために悪人になったハンス、家父長制で抑圧されている嫁ぎ先の兄、別の男性の子供を妊娠しているソンジャと結婚を決意した体が弱い夫、身障者の父、起業した息子、何不自由なく育った在日3世の孫と描き分けがはっきりしていた。
ソンジャの人生にも母、姉妹、同じ境遇の地主高齢者女性、富裕層から貧困生活を強いられた義理の姉、息子の後妻とその娘と境遇の違う女性たちがおり、境遇やジェンダーの違いを「それぞれの役が体験している同じ時代」が垣間見えて、それぞれの辛酸を想像せずにいられない濃さがありました。


うまいな、と思ったのは宗教や性差別、移民への差別、災害、生活格差、赤狩り、エイズなどアメリカにも響く小テーマを不自然なく落とし込んでいたところ。

3ヶ国語でやはり日本語がネックでしたが、キャストの努力と脚本での工夫が見えたし、各語の方言を入れていくのは調査力凄すぎます。
他言語の訛りと方言の訛りが入る脚本をよくここまでまとめたなと。


2人の監督が担当を分けて撮影したそうですが、個性を感じつつ質感はシームレスだったし、ダブル/トリプルアイデンティティのキャストとスタッフが移民の物語として真剣に取り組んだことがうかがえるすごい作品でした。
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