ぴょん

この世界の片隅にのぴょんのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2018年製作のドラマ)
4.5
丁寧に忠実に描かれていて、とても素敵なドラマでした。
大変私事ですが最近ドラマアレルギーというか、独特の芝居がかった台詞回しや現実離れした展開なんかがむず痒くて敬遠していたのですが、こちらは長い映画のような雰囲気で良かったです。

既に世にたくさん出ている戦争を題材にした作品とは少し違い、戦地のむごさや爆心地付近の悲惨な被害を訴える場面を主に描いた作品ではありません。
戦前の長閑な日常から、戦争が少しずつ生活を蝕んでいく様。悲観することなく工夫して強く生きていく人たち。嫉妬もするし喧嘩もする。

役も皆さんハマり役でした。
松本穂香さんはすずのぼんやりとした優しい雰囲気がぴったりでしたし、
尾野真千子さんは難しそうな役ですが、テキパキしつつ嫌味を挟んできてめちゃくちゃ小姑らしいけど人間らしくもあって憎めない。こちらもイメージにぴったりで感動しました。
松坂桃李さんは、こんなところにそんなイケメンがいていいんか…と思うほどイケメンでしたが、寡黙で優しい昭和の男性でした。

映画では描き切れなかったリンとの友情も描かれているし、台詞なども原作に忠実でとても丁寧に作られていると感じました。
二階堂ふみさんも美しくて儚げで、良かったですね…(語彙消失)

平和ボケしている私は、凄惨さを描いた作品を見てもどこか現実離れしているように感じていたと思います。
この作品は日常の中に少しずつ戦争が近付いて、襲い掛かってくる様子が生々しく、戦争が起こることの恐怖を感じました。
原子爆弾の投下後も、家族のことは心配だし不安だけど、情報がなくてわからないまま日常が続いていく様子がリアルで心苦しかったです。
アニメ映画版も大好きですが、こちらの方が尺が長い分丁寧に描かれてますし、日常を感じ易いですね。
またやはり実写だとよりリアルに感じ易いので、是非たくさんの方に見て欲しい作品です。

☆4.5の理由は、謎に挟まっている現代シーンを蛇足に感じたためです。
この手の戦争作品には必ずと言って良いほど、主人公の子供あたりが現代の若者に本編の内容を語っている描写がありますね。
数少なくなっていく戦争経験者からのメッセージ、今でも近くに感じて欲しい、知って欲しいという意味合いでしょうか。
その意図は汲み取りますが、作品として見ていると、いるのか…?と感じたのが本当のところです。

ただ、本当に素晴らしい作品でしたから、これまでに見たどの作品より戦争の恐怖やむごさを生活の近くに感じました。
現代シーンを蛇足に感じたと書きましたが、それは本編のシーンで十二分に伝わっているからだと思います。
何度も噛み締めて見たい、素晴らしいドラマでした。
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