川端隆史

ユニコーンに乗っての川端隆史のレビュー・感想・評価

ユニコーンに乗って(2022年製作のドラマ)
3.5
 ストーリーに「スタートアップ:夢の扉」と「マイ・インターン」の要素が多分に、音楽に「スタートアップ」の一部に感じられたものの(ゆえに評価は抑えめ)、実力派俳優をキャスティングして日本でスタートアップをテーマとしたドラマが放映されたことの意義はある。

 特に、小鳥さんのようなキャリアチェンジは、これからの日本社会では重要なテーマ。現実社会ではそうそううまくいかないかもしれないが、社会経験の長さがあり、小鳥さんのような素直に新しい世界と向き合うということは、平均年齢が48歳となっている日本社会にとって、これから必要な事だろう。ちょうど、リスキリングも話題になっている。

 小鳥さんはまさに48歳の設定。私自身も47歳を迎えて官庁、大企業、スタートアップ、海外現地採用などを経験し、残りのキャリアをどうしていくかはテーマであり、親近感を感じた。過去の仕事を振り返っても、スタートアップ環境は非常に魅力がある(会社に恵まれたと思うが)。40代、50代からのスタートアップという選択は十分にある。ただし、多くの人が経験してきた男性中心の年功序列型企業からのキャリアチェンジは、本作の小鳥さんのようなマインドセットの人でないと難しいだろう。

 これは自分の仕事じゃない、若い女の上司から指示されるのは嫌だ、ノリで仕事するお兄ちゃん社員とはそりが合わない、LGBT社員ってなんだ、みたいな人には、そもそもスタートアップ勤務は難しいだろう。これからは大企業ですら、そうしたカルチャーが入ってくるだろうし、変化できない大企業は多様で優秀な人材を確保することが困難になるだろう。仕事のスキルセットも重要だが、本作では、スタートアップにおけるカルチャーフィットの大切さも読み取ることができる。

 本作のように多様な年齢、多様な背景を持つ人物が登場するビジネス系ドラマは、今後にも期待しておきたい。日本のドラマは、この路線を強化して海外にも発信するのが面白いのではないかと思う。韓国ドラマにもお仕事系はあるが、意外と、日本ドラマの方が割合としてはお仕事系は多い気がする。それだけ、日本社会では仕事や会社の存在が大きいということではないか。ただし、日本ドラマは恋愛要素を強調しすぎるきらいがあり、無理矢理に恋愛要素をクローズアップはせずに、人間の心の揺れ、ぐらいの表現にして、ビジネスの話題をより中心に据えた方が良いと思う。日本社会の年齢構成を考えれば、こちらの方が視聴者は獲得できるであろうし、世界的に見ても仕事という共通軸は一定の訴求があるはずだ。
 また、本作の後に見始めた元サッカー選手がスポーツマネジメント会社に勤める「オールドルーキー」にも相通じるテーマを感じた。
川端隆史

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