ムギ山

メモリアル病院の5日間のムギ山のネタバレレビュー・内容・結末

メモリアル病院の5日間(2022年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

第1話を見たのがちょうど台風8号が来ているときだったので、臨場感がハンパなくて面白かった(という言い方もアレですが)。それにしてもハリケーンが襲いかかってくる場面はもとより、冒頭の水浸しになった街をボートで進むシーンや、堤防が決壊して水が街にあふれてゆくシーンなど、「これどうやって撮ったん!?」という映像がてんこ盛りですごい。堤防の決壊はCGなんでしょうか。テレビでしかやらないのもったいないなあ。

しかし、この作品の本題はハリケーンが去ったあとにあるのであった。最終的に殺人の疑いをかけられた医師たちは不起訴になり、それとは別に訴えを起こした遺族とも和解が成立したということだけど、この作品はあきらかに病院を有罪として描いている。そしてセリフなどでそれをはっきりと言わない分、制作陣の静かな怒りが伝わってくるようである。ラストの字幕で「緊急時の医療サービスの優先順位は今も未解決である」とあるように、そもそもシステムが災害を十分に想定したものになっていないことが問題の根本にあるのだけど、個人的には第5話(5日目)でいきなりやってきた救援隊が「避難命令が出たから5時までに動ける者は全員避難」と言い出したのが諸悪の根源としか思えない。「動ける者は避難」という命令は「動けない人は見殺し」を含意しているはずだけど(そのためにポー医師らは安楽死の方法を選んだわけだし)、その命令を出した人間の責任というのはどーなっとるの? と思わずにはいられない。いやマジで。

あるいはまた、「洪水のマニュアルがない!」とテンパる看護部長や、その看護師に「私たちにできることはもうないのよ」と言われて病院を去るボルツ医師、テレビを見ながら「なんとかしないと」と焦るものの上司に「あとは行政の仕事だから」と言われて何もできない親会社テネット社の社員、救助に来たボートに患者を乗せたあと自分も飛び乗って逃げてしまう警備員等々、登場人物のほとんど全員が「みんなが少しずつ無責任」であることによって最悪の結果が招かれてしまった、というふうに見ることもできるかもしれない。

出てる役者さんみんないいけど(悪役をやってる人たちは特に)、立件のために奔走する二人の捜査員(マイケル・ガストン、モリー・ハガー)がかっこいいし泣ける。
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