Kaji

ナルコの神のKajiのネタバレレビュー・内容・結末

ナルコの神(2022年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ面白くて既に2周しました。

渋かっこいいアジョシ力と実力派で固めたキャスティング。
ユンジョンビン監督の初ドラマ作ということで期待も高かったのですが、間違いなかった。

監督の映画作は大方観ていて、そのジリジリとしながら潮目が刻一刻と変わる作風と中年男性の泥かっこいいところをしっかり撮ってくれるフェティッシュで好きな監督です。

今作ではミニシリーズ全6話の展開配分も良く、単なるマフィアの島争いに終始せず、麻薬取引での利権争いと金の流れ、また一般人が参画することで何本も関係線が張り巡る展開。
中国マフィア・コカイン流通を牛耳る男・国情院・国家権力、アメリカ。。。
キャラが最高なので、全員分で全7話(イ執事のキムミンギィ君含め)スピンオフドラマ作ってほしい〜
チョウジン氏の回はめちゃくちゃ面白くなりそう。

時代設定をつなぐと、主人公イングは1968年生まれ、5年後にベトナム戦争から父が帰還、「なぜ父が銃を持っていたのか30年後にわかった」とナレーションが入るので単純計算で2003年ごろ、スリナムの滞在は何ヶ月だったのか不明瞭ですが水産貿易をしていた時、服役も含めて2年〜5年ぐらいではないでしょうか。
ラストのDEAの人が「イラク戦争で禁煙した」とあるので、クライマックスは2003年以降です。
主人公イングの苦労人ながら、飄々と口がうまく、時代に迎合しつつ食い繋いでいた一般人の強さに「ほんとハジョ様何でもできるな〜」っと。
最後にライフルを構える時にアクションものに出ていた身のこなしが出てしまってましたね。

胡散臭さと欲深さを信仰で覆い隠した感じが最高だったファンジョンミンのチョン牧師は90年の覚醒剤取締で逃亡、3年後に地権詐欺後、宗教詐欺をしていてスリナムを見つける新聞は2002年でした。
その頃スリナムでクーデターによって政権を得ていた軍人出身の大統領と手を組むと。ハレルuヤ 悪魔せっき。
実話ベースなのでモデルのチョボンヘンのナムウィキを翻訳かけてみると、逮捕は2009年だったようです。

続けて、韓国国情院は1999年改編( KCIA→安企部→国情院)なので、チャンホ(パクヘス)の自己紹介も時期は合致します。チャンホとあともう一名のアンダーカバー要員は多分すごいエリート。
もう1人のアンダーカバーのあの人!演技すごかった!特殊部隊出身で訛りも完璧に擬態してましたね。イングと同い年笑 ちなみに俳優個人としてはハジョンウが一つ年上です。
 チャンホがいちいち言う「シクサハショッソヨ(食事されましたか?)」や唾を吐いていたのは監視モニター中や作戦開始のサインだったのかな。

張震のチャンジェン、チャイニーズマフィア。もう登場シーンからカッコよかった。ビリビリとした凶暴さの中にどことなく線の細い、神経質な感じか漂っていて、タトゥービシビシのサグいルックスもキャリアで初ではないでしょうか。
なぜスリナムで地盤を固めていたかわかりませんでしたが、アメリカのコミュニティから流れてきたのかな。英語話していたし。

チョン牧師と関連があったカリ・カルテルは別ドラマ「ナルコス」にも出てくるそうで実在したカルテルのようです。

 下地の整理を長く書いてしまいましたが、南米麻薬戦争が韓国にも関連していた巨大さも驚きですが、この物語は「韓国に麻薬を入れないようにする」話であり、麻薬=金で。
 常に個人的な物語と政治・歴史・国際関係などの社会の物語を入れ込む韓国エンタメに於いて、この物語にある中・韓・米の関係性で「他国の中の韓国」を描き、海外で人気が高まる韓国エンタメへの警鐘と蓄積知への自信。それをネットフリックてアメリカの巨大プラットフォームで出す気概。
      かっこいい!!!!!!!

 
 「モガディシュ」でも飛び地の半島として南北関係を描いて、それまで半島内で個人間の共闘と結びつきで描かれてきた南北像を海外でも発生する南北の摩擦と結びつきの肖像として一歩でた感があり、今作ではドル紙幣に書かれる「IN GOD WE TRUST」が金を信じる俺ら的に何度か出ますが、所詮「カネの上の文字」と軽薄さがそこはかとなく漂います。
 ラストで国情院から未払いがあっても「まあいいぜ」的に迎え、チャンホの申し出を断る車修理工イング。お金よりも大事なものがある。
 「せめて子供たちのこの話を・・・」。
 韓国初メジャーリーガーのパクチャンホのサインボール。イングは偽物と思い、チョン牧師は本物と思っていた。。
 洒落た伏線と知的な比喩が重なり痺れました。

 お金で左右されない自分達の経験や蓄積知を既に得ている充足感と自信、もっと知ってもらいたい・まだ見せられるものがあるという監督の創作への希求であるのかもしれないとイチ韓国映画ファンの私には思えました。
ユンジョンビン監督、新作待っていますよ!
Kaji

Kaji