さえまる

THE DAYSのさえまるのネタバレレビュー・内容・結末

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

全体を通して、死と対面した人間の息づかいがつたわる画。緊迫した状況下での表情や声色の変化を巧みに演じる俳優陣と、そこに尺をかける演出がすばらしい。


まず、地震発生直後に4号機で亡くなった作業員2名について、時間を割いて描いている点がいい。未来ある若者という印象の人気俳優・鈴鹿央子をここで使うというのも。

また、1号機ベントに向けた“決死隊”に関するシーンで、自ら手を挙げた者だけでなく、手を挙げられない側の作業員を演じた丸山智己の表情演技がすばらしい。

そして、未曾有の事態を前に専門家集団をうまく組織できずに情報が行き渡らないようすがよく描けている。実際こうであったことを知らないで見る人にとっては、東大出の無能がわらわらいるだけのように感じられるのではないかとも思われるが、各所がバラバラに動いてしまうもどかしさがつたわれば十分なのか。

門田隆将原案というところで不安感もあったが、個人的に理解している事実や、吉田調書とは相違のない内容がベースになっているように感じた。吉田所長が美化されてしまうのはある程度仕方がないかな。一方で、菅直人総理や枝野官房長官あたりの描写はかなり攻めたのでは。捏造部分があるとしても、あくまでフィクションであると理解していれば、東日本大地震と福島原発事故、関係したすべての人間を改めて考える・今後も忘れないという意味で価値のある作品であることは間違いない。


同じく門田隆将原案の『Fukushima50』と比較すると、今なお続く廃炉作業を意識させらる結びに仕上がっている点がよかった。これからの原発、これからの災害対策をどう考えるか、鑑賞者に問いかけてくるものがある。


本筋ではないが、東海村臨界事故における被爆者の姿がうつし出されるシーンが目に焼きついている。放射性物質の恐ろしさを説明するのに、言葉は要らない。
さえまる

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