RuiAuden

ダーマーのRuiAudenのレビュー・感想・評価

ダーマー(2022年製作のドラマ)
4.0
被害者のほとんどがゲイなおかつ黒人という当時として極めてマイノリティな存在で声の小さな弱き者たちを狙った卑劣な犯行。稀代のシリアルキラー「ミルウォーキーの食人鬼」ことジェフリー・ダーマーが暗躍した当時の米国の病んだ社会システムを振り返り、いかにしてその惨劇が見過ごされてきたかを告発している。しかし、この「当時」から現代にかけて、米国の社会状況が特段変わったかと言えば、決してそうではないところに現実の怖さがある。ポリコレや多様性など表面的な薄皮を一枚剥がせば、米国の暗部はすぐにでもその本性を見せるのだ。そして、ダーマーに先駆けて同様に卑劣で酷い連続殺人に勤しんだ「道化師ポゴ」ことジョン・ゲイシーの犯行とその最期を描いたシークエンスをリンクさせた構成、ダーマーの父親を演じたリチャード・ジェンキンスの名演など、全体的にもとても見応えのある仕上がり。Netflixによる数ある実録犯罪ものシリーズのなかでも、屈指の完成度と言えるだろう。
RuiAuden

RuiAuden