もちお

仮面ライダーBLACK SUNのもちおのレビュー・感想・評価

仮面ライダーBLACK SUN(2022年製作のドラマ)
4.0
葵ライダーエピソードゼロって感じの俺たたEND。
個人的にはアリだが賛否分かれるのも仕方ない。

コレジャナイという意見
シン・仮面ライダーが控えている以上、真っ当な王道ヒーローものをやる意味はないので逆方向に吹っ切った感じ。スカッと爽快ヒーローものはあっちでやるので、こっちはあくまでもモヤっとさせるだけで何も解決しないし何も終わらないという監督のオレ流。大看板なので万人ウケするものを期待ってのもわからんでもないが、そもそも万人ウケしない内容からしてメタな作りでもある。鬱憤をぶつけて叩いたところで『え?これちゃんと見た?そういうとこやぞ?』って言えるのが悪く言えば卑怯。シンの企画がなければ王道やってたんじゃないかなあ。

R18
ゴア演出はあるがそのへんは鬼滅や巨人がウケている現在では子供の方が平気だと思う。それよりもモヤっとする話に耐えられない意味での年齢制限かも。間違っている人物の行動が作者の主張と勘違いされてしまう危険性も。テロ容認を主張してる風に見えたりとか。画面に映るものを真に受けすぎないことととか、馴染みのないジャンルへの寛容さとか、色々分別がついてない子供には見せないほうがいいかも。人類は分かり合えないという前提から何が出来るか何をするべきかというテーマをリアルで体現させるためにあちこち尖らせた計算ずくの賛否両論作なのか。

高潔な志を持った仲間たちが悪い大人に懐柔翻弄され殺し合う。
光太郎と信彦の壮絶な死闘が何の解決にも結びつかない。
幾多の犠牲を乗り越えながらも道を間違ってしまう葵。
怪人差別は無くならないどころかむしろ激化する。
組織は弱体化したが黒幕はのうのうと生き延びる。

犬死にの美学ってやつ?
まあライダーでやるなっていうのもわからんでもない。


特撮
特撮リテラシーがないと「シリアス胸糞映画」と「金のかかった特撮」が混ざってる故のチグハグさに耐えられないでしょう。特撮は全体の世界観よりも見せたいところに局所集中する画面作り。それが今作ではドラマパートが異様に出来が良く、特撮部分もかなり金がかかっている。つまり双方のギャップの差分が凄まじく違和感が通常の特撮よりもより濃いものとなっている。いきなり変身とか言い出すお約束感にファンとファン以外では受け取り方が違いすぎるかも。

大看板だからこその要求や制約に縛られすぎた感はある。大物俳優と重厚な雰囲気で本格的な作品感を醸し出してはいるが、重要人物であるビルゲニアのデザインで誰もが「ニチアサ特撮」に引き戻されてしまうので没入感が削がれるどころか興醒めしてしまうのもわかる。勧善懲悪でないっぽいのに悪者があえてのコテコテのステロタイプなので「ゴア描写=大人向けという浅い考え」で作られた作品にも見られやすい。初見は誇張しすぎと笑って見ていても次第にイラッとさせられてしまう演技はすごいけど。

内容がニチアサ的ヒロイズムでないからこそ、チープでシュールな特撮感を演出することで仮面ライダーの文脈にあえて甘えているのだと思う。下級怪人の着ぐるみ感は予算の問題もあるがメインとモブの区別がつきやすいアイデア。ビルゲニアの役どころなら表情の演技が必要ということもあるだろうが、誰が見ても浮いているのはあきらかなのにあえてメイクすらしないという勇気の要る決断。誰もがツッコまずにはいられない謎の汁。

不満を挙げるとするなら
葵の変身にはキターってゾクゾクしたのにスーツそのまんま。それならライダースーツにして欲しかった。最終回にはファイナルフォームってのもお約束でしょうよ。
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