Kaji

ザ・グローリー ~輝かしき復讐~ パート 2のKajiのレビュー・感想・評価

4.3
すごく面白かった。
単なるリベンジサイダードラマじゃなくて、丹念に練られた復讐計画とドンウンに共感していくメンバーの深い傷口を共有したアンサンブルも見事だったし、いじめ加害者たちの優位者・強者の理論に乗っかった砂上の城が崩壊するまでの緊張感もすごかった。


パート1の壮絶ないじめシーンが大人になったドンウンの冷静沈着さに繋がることと、加害者チームの半狂乱になって終始足の引っ張り合いをする愚かさのコントラストが鮮やかかつ全てつながりが自然で、俳優のキャラ造形も素晴らしかった。

そこにキムウンスク作家(トッケビ他)と秘密の森監督の緻密な伏線が重なって、総合的にみてもかなり饒舌なドラマだったと思う。

なんといってもヨムヘラン氏のイモニムは過激なDV被害に遭いながら、娘を離して守り、葬儀をして赤い口紅を塗るまでの情感の表現がほんと演技巧者。「明るい被害者」と自己紹介するカンヒョンナムが使命を得てイキイキしてくる感じから、絶望すら感じられないDV被害までの振り幅と表情。すばらしい。私的百想助演賞。ブラボー。

苦労の末に達観しながらも火を消さなかった女ドンウンの凄みをさらっと演じてるソン・ヘギョ氏もブレない演技で芯があったし、イドヒョン君の才気あふれる医者、そして復讐に共感するヨジョンもよかった。

ヴィランの5人も底意地の悪辣さが滲み出る半狂乱の演技が目立つけど、調整が効いていたと思う。

キャストはベテランから子役、新人、スターまで徹頭徹尾行き届いた配役。


この作品は、単純に「悪いことをしたやつを地獄へ落とす」復讐が軸になりつつ、加害と被害の境界線と心を持つ動物としての人間を洞察したドラマだと思う。

悪い方、加害する方になったから心を病んでいるわけではない、
被害を受けたから加害をして良い、そんな単純な解釈よりも少し次元を上げて、勧善懲悪が社会の中で必ず機能しているわけではないこと、法の不備、善性も悪性も滲みあってしまうこと、塞がらない傷口を無理に閉じずに何に昇華するか、ヒロインが見せた被害者意識に呑まれず加害者にも同化してしまわない精神力。
 そのあわいにある複雑な人間の営みや選択を過度に心理描写に頼らず丹念に取捨択一して描いていったハイクオリティなドラマだと思う。

キムウンスク作家の作品はラブストーリーにバカデカ感情を乗っけて運命論を展開しながらもちょっと笑えたり、緩急がうまくて誰もが認めるヒットメーカーだけど、サスペンスでもここまで骨太な筆力があるなんてたまげるわ。
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