恋愛ドラマの往年的なノスタルジーと現代的な手触りが溶け合い、ジャンルにとって新たなスタンダードとなり得る可能性すらも感じる、良いドラマだった。
節々でシンデレラストーリー感が強いのは否めないものの、好きを仕事にしていく過程にあるシビアさや通過儀礼をはっきりと描き示して、そこでの擦れ合いを恋愛描写につなげていく。
このドラマが最終話まで、あからさまな恋愛描写を控えめにしていてもしっかり恋愛ドラマに見えていた理由は、目標と恋愛の狭間にある心をどちらかに傾け過ぎず、密接に一つのものとして描いていたからだと思う。
最終話では、より正面から相手へ言葉を伝える事で人物を動かすシーンが必然的に増える。
こういった誠実さの様なものは最近のドラマでは特に、とても重要な事として扱われていると感じていて。
その現代的とも言える姿勢を、本音を隠しすれ違うことが作劇上の醍醐味となる恋愛ドラマで示すとどれだけ感慨深くなるのかを、このドラマによって知る事が出来た。