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恋人~あの日聞いた花の咲く音~のseonaのレビュー・感想・評価

4.6

2023年1番どハマりしたドラマ
恐れ多くもこのドラマを端的に表すなら
「戦争を時代背景とした 愛する人のためなら死を恐れない主人公と何としてでも生き抜くことで愛を守り抜くヒロインのヒューマンラブストーリー」なんだけど それだけではない。戦争捕虜や家族関係etc etc 多くの要素を含んだドラマ。


[シーズン1 ]9/10 ☆4.3

 リアタイと英語字幕で視聴したのでセリフを全て理解できたわけではないけど 面白かった。映画『風と共に去りぬ』をモチーフに(韓国にとっては屈辱の歴史なので)あまり時代劇では描かれてこなかった丙子の乱(清による朝鮮侵略戦争)を描いたところが新鮮で一線を画してた。
(明王朝から清王朝に移行する17世紀前半の東アジア情勢を理解しているかいないかで物語の解像度が変わってくるので、ネタバレ厳禁な人以外は 当時の朝鮮王・仁祖の治世をググるといいと思う)

 通信手段がなく 相手の安否を尋ねることが困難な時代だからこそのすれ違いが物語のカギでもあり とても辛かった。何事も執着せず飄々と生きてきたが ある女性と出会い 人生を投げ打ってでも彼女を守り、狂うほど愛してしまうナムグンミンと 守るべきものを守るため愛する人の前で素直になることができないアンウンジンのケミがよかった。ナムグンミンの演技が特に素晴らしいのでナムグンミン好きには堪らない作品だと思う。

ヒロインの性格は 赤い袖先のドギムに似ているのでドギムに共感できなかった人には向いてないかも。

[シーズン2]11/19 ☆4.8

 日本の視聴者がいないからTwitterで韓国人のヲタクたちと繋がって話し合うくらい どハマりした。最近の韓国ドラマは原作があるものが多いので結末を知ってる状態で視聴する視聴者も多いけど、このドラマは完全オリジナル脚本なので ジャンヒョンとギルチェが死ぬのか 生き残るのか最後まで分からないからこそ 結末を予想し合ったりして本当に楽しかった。ぜひネタバレを踏まずに視聴して欲しい。(以下ネタバレ注意)


 シーズン1は丙子の乱がメインだったけど シーズン2は2人の恋愛と戦争捕虜たちに焦点を当てていて物語の核心を突いていた。還郷女になったギルチェやヨンランのような捕虜たちを通して、当時の女性たちが受けた屈辱をリアルに描いていて、歴史的認識を修正しようという強い意志を感じた。ギルチェの「こうなったのは私のせいではありません」という台詞、「オランケに辱められたギルチェは...?」と聞くギルチェに対する「抱きしめてあげなきゃ、辛かっただろうに…」というジャンヒョンの台詞... 還郷女たちが受けたのは 恥ずかしいことでも羞恥心を感じることでもなく 辛いことだったということをすごく伝えたかったんだろうな...

 儒教社会や家父長制を嫌うジャンヒョン、儒教社会や家父長制に最後まで囚われ続けたギルチェ父・ジャンヒョン父・クウォンム、儒教社会や家父長制こそ世の中の道理だと信じていたが彼らを傍で見てそのイデオロギーが崩れてしまったヨンジュン。クーデターで王になったからこそ自分の息子に謀反を起こされるのではないかと戦々恐々とする王、命の恩人であるジャンヒョンを命懸けで守ろうとするリャンウム、ジャンヒョンによって成長していくソヒョン世子... 男性キャラクターがそれぞれ際立っていていい意味でも悪い意味でもよかった。特にジャンヒョン父の「恐れる者は残忍になる」という台詞が最後ああいうふうに伏線回収されるとは...

 (特権階級の)母親が出てこないことがこのドラマの特徴のひとつだけど その理由として 当時の女性の理想像は儒教と家父長制に基づいているから それらを正当化しようとしてしまうからではないかと思ったり思わなかったり...

 この作家さんは記憶喪失設定が好きなのか二度も出てきて 1回目はソヒョン世子とカン嬪の史実を変えないためだって理解できても 2回目も二人を簡単に再会させないためだったんだろうけどスパンが短いだけに納得しにくかった。どうやら 作家さん曰く「魂に刻まれた愛」を描きたかったらしい。納得できるようなできないような...

 最終回の解釈を巡って韓国ではハッピーエンドではなくサッドエンドではないかって論争が起きて 後日未公開シーンを含んだ最終回拡大版が放送されたんだけど そっちを見たか見てないかで評価が変わりそうな気がする。
(追記:Vikiでは拡大版が配信されてる! )
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