カズミ

unknownのカズミのネタバレレビュー・内容・結末

unknown(2023年製作のドラマ)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

吸血鬼を題材にする、と聞き及び、日本ドラマでそれは少しきついのでは……、と身構えていた。第一話で「あぁ、これは暗にマイノリティを表しているのか」と予想外にも号泣し、コメディとサスペンスの温度差は激しいものの、毎週楽しみに見ていた。だからこそ、最終回が残念でならない。

虎ちゃんの過去回想をあれだけセンセーショナルに描いておきながら、その後の回収はなし。井浦新さんが飛び入りでゲスト参加した旨は記事で読んだが、まさかここまで主線に絡んでこないとは。
真実など当人ですらわからないことがあるのだから、他者になどわかるわけがない、ということが作中の大きなテーマなのだとは推察できるが、だからこそ互いに歩み寄って、想いを伝え合った方がいい、という路線で話が進んできたのではないのか。
こんな、中途半端に投げやられても……無理矢理解釈するなら、対話の叶わない相手がいることで、今目の前にいる人をより大切にできる、とも言えるが、あの事件の真相が本当に脅されたことで息子の同級生含め刺殺した上に崖から飛び降りても存命で数十年身を隠して生きてきたのだとしたら、加賀美よりも恐ろしいまである。

個人的に、回を増すごとにこころの言動が肌に合わなくなってきたのもなかなか厳しかった。大切な人の心情も配慮しない自分本意のメンヘラじみた発言を聞くたび、「あなたが友人少なかったの吸血鬼関係ないんじゃ──」などと思考がよぎり、感情移入どころではなくなってしまう。
しかし、最終回の強引な最後の晩餐のくだりなどを見る限り、作り手が書きたいシーンを先行して余白の辻褄合わせを軽視し、乱暴な穴埋めをしたゆえのキャラの人格破綻が垣間見え、これはもう、こころちゃんも被害者だな、という結論に達した。
こんな感想を抱いているから、虎ちゃんと加賀美がなぜそこまで彼女に熱を上げるか心底理解できず、おそらくは山場なのであろう対峙も冷めた目で見守ることしかできず、高畑充希さんが昔から大好きで見始めたところが大きいので、よもやこんなことになろうとは……、と哀しくなってしまった。

しかも、よくよく考えてみれば、吸血鬼の怪力設定があれほど強調されたにも関わらず、対する加賀美は人間。しかも、凶器はアイスピック。ならば、逃げないで抵抗ついでに手首折るぐらいは全員可能だったはずだ。
弱点があることも同時に強調されていたのだから、そこで隙をついた、ぐらいの納得いく説明は欲しかった。

勢いに任せてだらだら講釈を垂れてしまったが、8話までの期待値が高かったためのフラストレーションをどこにぶつけてよいやらわからず、暴走していることは自分でも承知している。

終わりよければすべてよし、の真逆を行ってしまったが、それまでは主に出演者の皆さんのコメディからシリアスの切り替え見事な演技力や映像の魅せ方、SEの入れ方などの絶妙さに、穴だらけの脚本にも目を瞑れるほど、泣いたり笑ったり、楽しむことができていた。
題材はファンタジックだが、断罪を恐れて本性をひた隠し、疎外感を飲み込むマイノリティの機微を重くなりすぎることなく、コミカルに描いている点が好きだ。
最終回次第では、好きなドラマのひとつになっていた気がするので、ショックを隠すことができない。
カズミ

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