青

虎に翼の青のレビュー・感想・評価

虎に翼(2024年製作のドラマ)
-
各話コメント欄に記入すると、スマホ画面がフリーズして記入内容が消えるのでこちらにつらつら書きます。

〈1週目〉女賢くて牛売り損なう?→損なうように仕向けられるのだよ
【1話】セーラー服を着た伊藤沙莉は女学生としてめっちゃ説得力のある姿だった。自己の容姿・身体的姿形も演技力なるものに含まれるのかもしれない。「猪爪寅子」という名前がいい。社会派朝ドラになる予感。個人的に、「優秀だから男社会に進出できた女性の物語」がもつ不気味さに触れるのか関心がある(勉学ができて人三倍努力しなければ男性と対等な知性を認めてもらえないという、高学歴女性が被る労力と困難を扱うことが出来るのだろうかという関心)
【2話】猪爪母が御勝手に用事ができたとき、米谷母が自身の娘を催促した。この催促の意味と、現代の「女性」の多くはその意味に居心地の悪さを感じることを、このドラマの視聴者はちゃんと受け取れているよね?さすがに信じていいよね?/現代的に問題になるテーマがナチュラルに盛り込まれていて、心が忙しい。歩いていているだけなのに、奇異な眼差しを向けられたり冷やかされたりする、いわゆる「女性」が日常生活で経験する事象が描かれていた。
【3話】松山ケンイチの「はて?」が良かった(社会派ドラマを鑑賞すると段々と精神が陰鬱としてくるのでコミカルさや明るさを求めています)。/男性迎合的な女性がもつ「したたかさ」の美徳が登場した。したたかさが加熱すると、女性同士が相互排他的になるあの現象の原因となる美徳。この子、寅を敵だと見なしていないからアドバイスできるんだよね。すげー。
【4話】「したたかさ」と「ニコニコ」を否定してくれたので安心した。いわゆる「母娘問題(毒親問題)」、すなわち、「娘の幸せは私が一番分かっている」と自身の半生を踏まえながら自称する母とそのような母から逃れたい娘の関係性の問題にも切り込んできた。聞き手が真摯的か否かの基準は、話し手の話を遮らないことと、聞き手の誤りを聞き手自ら訂正できることだと思っている。この基準は話し手が女性、聞き手が男性の場合には破られやすい傾向にあると思われる。他にも、話し手の立場が下、聞き手の立場が上の場合にも容易に破られる。
【5話】なるほど確かに、男性迎合的(あえて家父長制に迎合する、と表現してもいいかも)な女性は、その生き方しか知らず、更にその生き方が良いものだと信じてきたわけなので、「あなたの生き方は間違っている」などと単純に彼女の人生を否定できるものでは無いのですのぉ。/道端ですれ違う人々からも目が離せない。/松山ケンイチ好きだわ~。1話で抱いた関心へのアンサー回だった。

〈2週目〉女三人寄ればかしましい?→人間一般に言える
【6話】クィア研究の観点からすると、寅が(名前を覚えていないが)スーツ服のあの人を「女の子」と呼称するのは悪いことだ。でも、昭和初期の舞台にそれを要求するのは酷で、むしろ本作の問題提起のやり方は「これは現代の問題である」ことを視聴者に気が付かせることにある。/寅ってヘラヘラしている人物なのかな?スーツ服のあの人が怒りを向ける対象は、寅がいう「スン( '꒳' )」とする女であり、寅は女性が舐められる要因を生み出す人物ではないと思った。
【7話】いわゆる「女性」が勉強やスポーツなどの熱中できることに励んでいると、「恋愛はどうしたのか」と横槍ないしチャチャを入れられる。彼女たちは自分に集中したいから恋愛の話は止めてくれと拒む態度をとるうちに、本物の恋愛感情を取りこぼしたり、その感情に蓋をしたりする。そして後悔し、やはり勉強やスポーツをするべきではなかったと意味づけしてしまう。/嫌な経験に慣れてはいけない。が、そう思う頃には既に慣れている。
【8話】よねさんの一人称は「あたし」だった。もしかしたら、よねさんはマッチョイズムを引き受けた「女性」なのかもね。そうだとすると、よねさんは自己の内に闘うべき(としている)相手が依拠する性格を密輸入していることになるので、多分いずれ己の矛盾に気がつき、挫折するはず。/寅の衝撃は、私がフェミニズムを初めて学んだ時のそれに似ていた。社会の姿と構造が自分の属性にとって不利な質を帯びていることに気がついてしまって、ビックリしたのだ(怒りや悲しみに転化される)。
【9話】松山ケンイチが甘いものを手にしていると、某少年漫画の天才の姿がよぎる…(狙っている?)。/法律は規則ではなく、裁判官の自由な心証が入る余地がある、とな。直後に、水を飲む裁判官のシルエットを配置する演出がGoodだ。裁判官は論理や規則に完全に支配された存在ではなく、生理的な身体をもつ人間なのだという説明になっていたから。
【10話】朝ドラっぽさ、ちゃんときたー(萎えたー)。最後の嫁姑問題の萌芽的描写は、…フラグかな?

〈3週目〉女は三界に家なし?→家父長制の皮肉としてなら理解出来る
【11話】月経が描かれた。世の中、「月経」と聞いただけで、「下ネタだから」とか「触れると怒られるから」という理由を作って忌避する人がわんさかいるのに、思い切りがいい。ちゃんとしてますなぁ。振り返れば、女の人が主人公になりがちな朝ドラで月経が描かれていない方が不思議だ。/確かに寅ちゃんは庶民ではない。映画『あの子は貴族』における花子ポジだ。
【12話】男子学生達はあからさまに法廷演劇をバカにした。でも女性を馬鹿にする当時の言説の実態は、このように分かりやすいものだったのだろうか。今回のように公に罵倒されるのではなく、ヒソヒソと後ろ指を刺されるか、静かに諭される感じだったのではなかろうか。
【13話】辛い経験や性的被害は、視聴者の娯楽として消費されてはいけないと思っているのだが、うーむ…スレスレだった。よねさんの身に何が起こったのかは直接的に描写されない。しかし何があったのかを視聴者に分からせなければいけないから、俳優の手つきなどで性的な表現がなされる。/寅の仲間たちを被害者の会のように見たくはない。「女性=被害者」の物語からは脱却してほしいので、今後に期待。/具合が悪くなる視聴者がいたのではないだろうか。内容が悪かったからではなく、自身の辛い経験が想起されたために。/「女を辞める」によねさんの生き方が集約されていた。
【14話】コメントに書けた。
【15話】寅ちゃん、朝ドラしてますなー。/寅の母からしたら、娘と息子とその嫁のために世話を焼いてきたのに、彼らは自分の下からスルスルと去っていくことになる。「私の人生って?」とか「私の存在意義って?」と考えるうちに、自己の人生の中身の無さを垣間見てしまい、深刻な中年クライシスに陥るのではないだろうか。あるいは、「名前のない問題」と呼ばれている中年女性に関する問題に。

〈4週目〉かがみ女に反り男?→皆、スマホ首だから関係ない
【16話】米ちゃん夫妻は結局出ていかなかったのか。それとも里帰り?/「開拓者」と形容されたら、そりゃあ浮かれますよね。/社会にも作品一般にも染み付いてしまった「場のトラブルメーカー=女性」という公式を、どのように切っていけるのかに注目したい。
【17話】観るのが辛くなってきた。
【18話】子どもをもつ親の気持ちが分からないから、お話に入り込めなかった。子どもの存在と母親の人生の価値が一体化することを受け入れられない←もしかしたら、女性の辛さを擁護する物語の多くは、大多数の人からこのように見られており、それこそ「普遍化できない」「感情的だ」的な懐疑の目を向けられているのかもしれない。と思った。
【19話】意外とあっさりしてますなぁ。自分から謝れない寅ちゃんの青さと弱さにもっと焦点を当ててほしかったなー
【20話】検察と闘うお話でもあるのね。/危機に晒された時の心理は、「どっぷりとどす黒いものに飲み込まれてしまいそうな……」というナレーターの煮え切らない言い方の通りだと思う。

〈5週目〉朝雨は女の腕まくり?→私は物理的に強いぞ
【21話】花岡くんが一気に下手のポジションに位置するようになった。若さゆえの柔軟性?/大事な食事の場面でも、子どもとケアする人は疎外される。
【22話】友人達がいい人すぎる。
【23話】新聞記者さんはハードボイルドが似合ういい人。/松山ケンイチが登場してわくわくした。
【24話】正解はCMの後、のノリ。引っ張りますなぁ。/ムスッとした表情をシワを寄せずに表現出来る松山ケンイチをすごいと思いました。
【25話】熟年夫婦って素敵だよね。/穂高先生からは寅ちゃんへの言及はなかったのに、自ら寅ちゃんに言及しちゃう桂場さん、かわいい。/各週タイトルが女性蔑視的な慣用句への疑問になっていることに今気がついた。

〈第6週〉女の一念岩をも通す?→粘り強けることは強みだよ。
【26話】このドラマの傑出した点は、久保田の存在だと思う。寅ちゃんのような先駆者と呼ばれる人が登場する以前にも、実は名もなき先駆者がいるという構造?が、久保田の存在によって担保されている。〇〇の父とか、女性初の〇〇などと形容されるとき、多くの場合で本当の先駆者ではないよね。寅ちゃんは全くの無から出てきた訳ではなく、寅ちゃん以前にも先駆者はいた。もし今後、寅ちゃんが活躍することがあるのであれば、それは寅ちゃん一人の力ではなく、名もなき先駆者がいたからなのだろうね。/第25回の法の解釈に対して、何らかの学術的な立場が与えられていたりするのだろうか。法はそれ自体が目的なのである、みたいな立場かな?
【27話】私は歴史に疎いので、朝鮮を出自にもつ人がこの時代の東京に居ることについて、それがどういう意味をもつのかをよくわかっていない。満州国に行くことを「国に帰る」と表現されたのは何故なのか。故郷の土地に帰る、みたいなニュアンス?/関東大震災は大正だったから、この物語はそれより後の時代のお話だよね。やっぱり、サイさんへの私の理解が足りない。
【28話】もしかして、人種差別と女性差別を受ける人の経験は単に人種差別と女性差別を足したものではない、という議論(インター・セクショナリティ)が参照されていたりする?/彼女たちは自ら諦めた訳ではないのだが、後に引けない状況に追い込まれて、「自ら退場させられる」という能動と受動の間に追い込まれる。たぶん、こういう経験をしている人は、ケアを担う人達にも多いはず。
【29話】やはりこのドラマは現代的な問題を扱っている。現代的な問題が時代を遡って昭和初期にちゃんと問題視されているのは、時代考証の面からするとおかしいのかもしれない。けれど、朝ドラの仮面を被った、現代の社会派ドラマなのであれば、昭和を舞台にして現代の問題を扱うのは果敢な取り組みなのではないかな。/久保田の問いは、初期の「ニコニコ」問題にも通じる。女性の役目として思いやりや共感が求められている社会に生きる人達は、期待された思いやりや共感力の発揮がない女性のことを、役目を怠った、あるいは何かが欠けた女性として認識するだろう。/まんま、医学部入試における女子差別の問題だった。トラちゃんが合格したことを「超優秀だったから」と理由づけするのは、恐らくこのドラマの主旨に反する。だから、まだきっと何かある。
【30話】「運も実力のうち」ではなくて「実力も運のうち」の話かな。/女性であることが苦しいという表出を「感情的だ」とか「粋じゃない」という感想を持って眺める人は、たぶん、寅ちゃんがいう「地獄の道」の意味を理解できていない。共感ではなく、理解すらできていない。多くの新聞社がやったように、そういう表出は黙殺されるか無視される。寅ちゃんを記事にした例の新聞記者さんは、寅ちゃんの表出に共感はしないが理解は示したのかもしれない。

〈第7週〉女の心は猫の眼?→これ貶しているの?「B型っぽい」と同じようなちょっとした悪口?
【31話】現代もののドラマとして見ているから、ふとした演出から戦時中であることを思い出して、ビックリする。…召集令状が届いたりしないよね?ありうるよね。軍隊に呼ばれるか否かの判断には、まさに強固な「男女」の区別が必要なので、寅ちゃん達のメンタルがどうなるか心配。
【32話】花岡くんからしたら、寅ちゃんは届かない存在だったのかな。もしくは、父と息子のしがらみの前では、恋心は二の次になる時代だったのかな。/私が寅ちゃんと同じ経験をしたら、立ち直れないのだが。
【33話】「明治か!」に笑った。/社会的信用を得るための結婚と生涯のパートナーとなる人との結婚では随分違うと思われるのだけど、寅ちゃんと両親が思う結婚はどっちなのか。たぶん寅ちゃんは両者の差を分かっていない。/両親にお見合いを依頼する展開は、昭和のお話ならではだなと思った。/社会の機運にうまく利用されていることは自覚しつつ、社会とは関係なしに自分がやりたいからやるのだと意志を貫くことはある。医学部に貼られた「〇〇外科医募集」のポスターの中心には女性(紅一点)が写っていた。あのポスターはその女性の女性性を利用しているのだが、だからといってその女性のモチベーションまでをも私が知ることはできない。
【34話】ミソジニーの世界ですなあ。「女性」弁護士とか「女性」作家などと、要らぬ印付けをされると、「可愛くて優しくて思いやりがあって純粋で無知なあの女性像」から外れた者として認識され、なぜか非難されるという、地獄の道。
【35話】寅ちゃんは地獄の道を歩んでいるのかもしれないが、一方で特権的な人でもある。/私が今まで自由に生きてこれたのは、遥かに地獄の道を歩む同年代の友人に励まされてきたからかもしれないと思った。/年齢に関わらず、また発言内容によらず、特権的な人っているよな~(本人は無自覚)と思うなどした。

〈第8週〉女冥利に尽きる?←いろいろムズい
【36話】被告人を演じた方の演技力が高いと思った。/弁護士が抱えるジレンマ。寅ちゃんは被告人を裏切って、正しいと思う弁護をするべきだったのか?
【37話】正しいばかりの生き方では疲れてしまう、これは確かにそう。そうなのであれば、前回寅ちゃんが悪意のある被告人を弁護して勝ったのは、まぁ許容してもいいのではないかと思う。
【38話】寅ちゃんの生き方は穂高先生の理想を超えていた。
【39話】かつての友人達と同じように、寅ちゃんも舞台から引きずり下ろされた。寅ちゃんに進言した人達に悪意は無い。むしろ優しさを発揮している。寅ちゃんが抱える辛さは「男社会」の中で生じたものなので、よねさんが指摘するように、事務所の人たちの優しさに乗っかると、男の人に迎合する女像(男の人に助けてもらわないと何も出来ない女の人)を再生産してしまう。これは今まで明大女子部が避けてきたことだ。でも、寅ちゃんが言うように、誰かの助けを借りなければ、寅ちゃんは倒れてしまう。寅ちゃんの「じゃあ、どうすれば良かったの?」という一言は、いわゆる「女性」が、女性としての役割も開拓者としての役割も期待される時に直面するジレンマを言い表している。/よねさんの態度はちょっとひどいと思った。寅ちゃんにあれこれ期待しすぎ。
【40話】ゆうぞうさん。

〈第9週〉男は度胸、女は愛嬌?→これ、最近だと「女は度胸」も聞くよね。反論なのか分からないけど。
【41話】友人も言っていたがこのドラマでは一般的に重大とされるイベントがあっさり流れていく。出産とか終戦とか。
【42話】寅ちゃんて昔はよく笑ってたね。/ゆうぞうさん。
【43話】お父さんは幸せな人だった。 /猪爪家の女の人は皆、配偶者を亡くしたことになる。
【44話】ゆうぞうさんの最期を見た人の存在が、寅ちゃん内部のゆうぞうさんの死を確実なものにした。さよならのない別れ。/ゆうぞうさんが目の前に現れたのは、寅ちゃんがゆうぞうさんを死者として認めたことの証だ。ようやくゆうぞうさんの死を受け入れるスタート地点に立てたということだろう。
【45話】一周回った。/男の人に向けられる社会的な呪縛を批判するメッセージがあった。
青