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デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士のjunのレビュー・感想・評価

4.3
ろう者との付き合いが割とある方だと思う。

多くの聴者は、傷つきたくなくて距離を取り、近づく聴者にあれこれ言う。
近づく聴者に、ろう者もあれこれ言うが、あれこれの種類が違ってそれは信頼関係の構築につながるものだ。
自分は距離を取って、近づく聴者をあれこれ言う聴者のことを、ろう者は信頼しない。
わかるのだ。
痛みとともに得た鋭い感覚だ。
騙されない。

近づく聴者とろう者は、ただただ互いを知り合う。それは聴者同士にはない、知り合い方だ。
言ってみれば、留学のようなものだ。
取り扱うのは言葉の問題ではなく、文化の問題だ。

文化は繊細だ。
一言では言えない。けれどある。
ろう者の文化を、なんとなく理解しても、わかった気にはなれない。

けれど、人付き合いは良い。
聴こえても聴こえなくても、
合うものは合うのだ。
信頼関係や好感は、理解を超えたところにあるものだ。

人には尊厳がある。
人間尊重と簡単に言うが、腹落ちは簡単ではない。
距離を取ってかわいそう、と片付ける人には使えない言葉だ。

このドラマは、本当に良いドラマだった。

コーダも、コーダの兄も、
私はやはり今後も近づきたい。
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