おりん

やさしい猫のおりんのレビュー・感想・評価

やさしい猫(2023年製作のドラマ)
3.7
入管法や人が生活する権利について自分も考えたいと思い、このドラマを観ました。法律や権利のことだけではなく、家族の形や人間愛を大切に優しく描いている作品だと感じた。

外国の文化にお互い触れることで新たな発見をしたこと、マヤが日常を絵に描いて家族や愛の形を残したこと。人との繋がりでこんなにも彩れるんだと感じた。個人的にこのドラマの好きなところ。

優しくて彩りのある生活を3人で送っていたからこそ、クマラが酷い環境に収容されたのは本当に辛かった。オーバーステイしたのは擁護できないけど、窮屈な環境・差別的な対応の中に収容される必要があるのか…?と感じた。クマラが今後手続きしないことがないように厳重注意したり、少しの罰金で済ますなど精神的に苦痛にならない対応をするのがお互い不快にならない方法だと考える。

ただ、クマさんことクマラとミユキの出逢い、クマラがオーバーステイをした経緯はもう少し丁寧に描いて欲しかった。クマラとミユキはどのように絆と愛を深めたか、クマラがどれくらい日本の法律を知っていたか。そこは深掘りして欲しかった点である。

また、一部の入管職員を悪質に描いているように見えたのが残念。麻生祐未のように淡々と質問して確認するならまだしも、明らかに質問攻めして圧力をかけるような描写はどうなのか。その点は「入管職員が悪のように描かれている」と捉えられても仕方ないと思う。ただ、現実もだいぶ酷ではあるので、その点どう描くのが妥当か自分でも調べて考えていきたいと思う。

とはいえ、このドラマでは最終的に、ミユキたちの家族の形や愛を示していたのが良かった。ミユキの語りはクマラとの繋がりについて真っ直ぐ語っていて、マヤは自分が考える父親の存在を真っ直ぐぶつけていて、クマラは自分の気持ちに素直に胸の内を話していた。特に、マヤが語っていた亡くなったけど記憶に残る父、小学校から高校の現在まで成長を見守ってくれた父。これは血が繋がっていようがいまいが、娘が父だと思うなら父だと思った。

人と繋がっていく時間と記憶と思い出。これがクマラが"家族の一員"そして"父親"であることを示したのではないか。
おりん

おりん