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東京裁判のJのレビュー・感想・評価

東京裁判(2016年製作のドラマ)
5.0
素晴らしい作品だった!
取材に8年かけて作り上げただけある!!
感動させられるだけでなく、色々考えさせられる高クオリティ作です。

実際に祖国が日本から戦争被害を受けた11人の判事がどこまで公と私を分けてジャッジできるのか?そのドラマは教科書だけでは分からず、本作のような映像によって初めて自分の中で昇華できました。

<撮影、構成について>
・判事たちを俳優に演じさせ事実を再現し、検事や弁護士、被告は実際の映像を最新の技術でカラーにした手法。ドラマのシーン中には取材インタビューシーンは割って入らない。
→ドキュメンタリーとドラマの絶妙なバランス!
・脚本や撮影に複数の国が関わっており、本作品において大事となる客観性が制作時点から徹底されていると感じた。
・各作品の末尾では、判事のバックグラウンドや歴史事実等の説明があり、分かりやすい。
・ややオランダ人判事のレーリング主観によりがちだが、異なる意見を持つ判事たちが悪者には見えないので、主人公視点に偏っていない。

<感想>
正論、理想論と現実主義の衝突や法の整備の限界、この辺りのドラマが非常に面白かった。

時間は有限であるため、議論にも期限があること。日本だけでなく、ナチスの裁判との連関性が求められ、第一次世界大戦やそれ以前の判例を反映させるべきという考え。一方、それだけでは将来における戦争犯罪への抑止力とはならず、事後法の制定も必要とする考え。想像では測りきれない、前提と理屈作りの難しさがあっただろう。

真の正義、公正とは何か?
その正義は誰の視点のものか?
どの事実に基づいたものか?
未来に対しての影響は?
片方の意見だけを極端に持ち上げず、複数の意見について、それぞれ根拠も述べられているので、視聴側としても判事のそれぞれの想いや心理状況を想像し、自分なりの解も考えられる稀有な作品だ。

この裁判の結果が、戦勝国の一方的な判決であると批判するのは簡単だが、では、どのようなプロセスを踏んで、どんな結論に至っていれば良かったのか?そこまで想いをはりめぐせられないといけない。何事も、批判するからには代替案の提示がなければいけないと私は思う。

ドラマを観ていて思ったが、実際に裁判に同席し、その裏で議論や駆け引きを生で経験した判事たちにしか辿り着けない境地の考えはあっただろう。
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