明治三十年(1897年)、主人公・葉野珠(はの・たま)は山口県の岩国に生まれました。実母は珠が2歳の時に亡くなり、父と後妻である継母によって育てられました。女学校を卒業後、代用教員として働き始めますが解雇され、故郷の岩国を追われることになります。親戚を頼って上京したことで、珠は幼き日の夢を強く意識し、小説の懸賞応募から、作家の道を切り開きます。 しかし、世の中は価値観が大きく揺れ動く時代。 大正から昭和にかけて、関東大震災と戦争、結婚と離婚、倒産そして借金…と、珠は、さまざまな困難にのみ込まれながらも、作家として生きることに向き合います。そうした中で、小説家として花を咲かせるのです。 時には敵を作り誤解され、傷つけ傷つきながらも、自由を求めて生きることに正直であり続けた珠は、小説に思いを忍ばせることで、読む人に「幸せ」を運んでいくのです。