シンタロー

銀二貫のシンタローのレビュー・感想・評価

銀二貫(2014年製作のドラマ)
4.2
大阪天満の寒天問屋"井川屋"の丁稚・松吉は、四年前、仇討ちで父を亡くし、自分も討たれるかというところ、偶然居合わせた"井川屋"の主人・和吉により、天満宮に寄進するつもりの"銀二貫"で救われた武家の息子・鶴之輔であった。生きるために丁稚となり、松吉と名付けられるが、武士の誇りを捨てきれず、心は揺れていた。大切な"銀二貫"と引き換えにやってきた松吉を快く思わない番頭の善次郎から厳しい修行と躾を受けるのだが…。
江戸時代が舞台の時代劇としては意外と少ない大阪商人の話です。松吉の青春がメインに描かれていきますが、この松吉が結構こじらせ気味の人物で、壁にぶち当たったり、挫折を繰り返したり、かなりシビアに描かれていきます。人と出逢い、思い合う気持ちが繋がり合って、人間として成長し、運命を切り開いていく姿には胸が熱くなります。ヒロイン・真帆との悲しい別れ、運命的再会、会わない約束、自分より相手の幸せを思う気持ち…なかなか切なく心に響きます。また、井川屋ファミリーの一体感、喧嘩を含めた親密感や、大阪商人の友情や義理人情が、温かく、美しく描かれているのも印象的。天満の街並みや船場言葉、数々の大火に運命を狂わされた人達の天満宮への厚い神信心等も見どころです。
子役出身の美少年くらいの印象しかなかった林遣都ですが、"カラマーゾフの兄弟"辺りからメキメキと芝居に磨きがかかり、本作は時代劇初挑戦とは思えぬ熱演で、大好きな俳優さんになりました。武士から商人になっていく葛藤や、悲しき過去との対峙等、全編通して素晴らしいお芝居で、非常に感動しました。ヒロインは少女時代を芦田愛菜、五年後に松岡茉優。どちらもあざとい感じが自分は好みではありませんが、まぁ好演。厳しさの中に、深い愛情を感じさせた塩見三省は名演。松吉の母親代わりともいえる女衆のお里を演じた、いしのようこの柔らかい存在感も良い。
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