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『マザー』のエピソード情報

第1話

『マザー』に投稿された感想・評価

3.6
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NHKの伝説的なドラマ監督、佐々木昭一郎(当時33歳)の第一作目。モンテカルロ・テレビ祭最優秀作品賞。1969年の港町神戸で“母親の面影“を求めてさまよう少年をドキュメンタリータッチで描く。音楽:織田晃之祐(NHK)。

捨てられたのか亡くなったのか、母親のいない少年ケン(横倉健児)。大阪万博を翌年に控えた神戸では国際色豊かな「みなと祭り」が開かれている。一人さまようケンは、パレードに出演するインドの女性、そして見物に来たスイスの女性に話しかけられ、一時の交流をしてすれ違っていく。やがて補導され「お母さんのところに帰ろう」と言われたケンは心の中でつぶやく。ボクのお母さんは真っ暗い海。僕のお墓も海の底にあるのかなあ・・・。。。

自分の好きな、佐々木監督の次作「さすらい」(1970)と比べると、かなり即興的に撮られていて内容の密度は薄い印象。しかしその分ドキュメンタリー性が打ち出され、寂しげな少年をモデルにした1969年の神戸の街の映像スケッチとしては魅力があった。佐々木監督によると、主人公の設定とナレーションだけシナリオ化して、後は即興で撮って仕上げたとのこと。

佐々木監督は本作以前はラジオドラマのディレクターで、寺山修司脚本「おはようインディア」(1966)をキャスティングした際に、本作で主演した横倉健児(当時9歳)を寺山とスカウトしたのだそう。横倉は本作の5年後に同監督「夢の島少女」(1974)でも主演している。

個人的に本作は、同年に寺山が作詞しカルメン・マキが唄った「時には母にない子のように」(1969)の映画化のように思えた。

♪時には母のない子のように だまって海を見つめていたい~ひとりで旅に出てみたい~母のない子になったなら 誰にも愛を話せない♪

もしも本作でこの曲を使用していたら、あまりにも内容がシンクロしすぎてカラオケビデオのようになっていたことだろう。

ちなみに本作のセンチメンタルな劇伴と口笛を担当したのは、NHK音響部門の大物・織田晃之祐。「未来への遺産」(1974)も作曲している。

※劇中で「歓喜の歌」をマンドリンで弾く仙人のような老人は、裏町の「大空詩人」と呼ばれた永井叔(当時73歳)。全国各地でバイオリンやマンドリンを奏でて喜捨を求める行乞の生活を送った伝説の人物。