mh

ヒトラーの建築家 アルベルト・シュペーアのmhのレビュー・感想・評価

-
第一部
シュペーアにまつわる再現フィルムと関係者のインタビュー集。
A 戦争中である1941-1943
B ニュルンベルグ裁判の直前から審理開始まで
C 現代のインタビュー集(2005年ごろ)
以上の三つの時系列がシャッフルされて進むのでなかなか複雑。
建築のためシュペーアがいった「ユダヤ人居住区を移動できないか」というひとことが、移送および収容の始まりだったというのが、けっこうなショック。
Cに登場するのは、シュペーアのこどもたち(とはいってもインタビューの時点で高齢)。ケールシュタインハウス(バイエルン・ベルヒテスガーデンにあった山荘)に滞在するヒトラーの有名なフィルムに登場する子どもたちが彼らでこれにもびっくりした。
ヒトラーと公私ともに親密だったのは事実のようだ。
Cにはレニリーフェンシュタール本人も登場していた。

第二部
A 戦争中である1944-1945(終戦まで)
B ニュルンベルグ裁判のスタートから結審まで
C 現代のインタビュー集(2005年ごろ)
ニュルンベルグで裁かれた戦犯たちのなかでも、シュペーアはひとり変わったポシジョンにいたことが第二部のキモ。
取り巻きのほとんどがヒトラーにおもねっていたなか、シュペーアだけは信念のある行動を取っていた。
証言する機会に感動的な演説を行って、ついにはデスバイハングングを免れることになる。
似ている優先でキャスティングされた主人公のひとにオーラがないのが見ててつらい。

第三部
シュパンダウ刑務所でお務め編。
冒頭の全裸になっての身体検査にけっこうな時間を割いてるので、プロットが少ないのかと思いきや、20年という長い期間なのでそれなりに盛りだくさん。
ただ、画面の変化に乏しいので、眠くなる。
オランダ人看護付き添い人を通じて、かなりの便宜を払ってもらっていたり、同じ刑務所にいるエーリヒレーダー、カールデーニッツ、ルドルフヘスなどといった、ナチ党の大物とのやり取りも興味深かった。
家族がくるけど面会時間を持て余す。家族側からは手紙にそうそう書くことなんてないみたいなくだりが繰り返されるのが、意図不明。
べつにうとましがれてるわけでもないみたいなのにな。
ヒトラーの登場する過去回想は少なめだった。
最後は出所して、シュペーアのその後についてもさらっと触れたと思ったけど、まだ第四部が残ってる。
第四部ではいったいなにが語られるのか興味が尽きない。

第四部
いよいよご本人が登場(とはいえ、過去のインタビュー寄せ集め)して総括に入る。
家族にくわえ、出版社のひと、建築家のひと、強制労働させられたユダヤ人も登場して、第四部の副題「本当に彼は知らなかったのか? 20年後のシュペーア」の通りの検証回。
20年の刑務所暮らしのあとは、自叙伝を出して、名誉も回復する。90分まるまる使って、怪しい→絶対知ってたという流れ。
刑務所に入っている間も家族はお金に困ってなかったり、出所後すぐに自叙伝が出版できるように手はずは整えてあったりと、相当なやり手。
シュペーアと共同作業していた無名の建築家フリードリヒヴォルタースが雰囲気あっていい感じだった。ググってもヒットせず。
アルベルトシュペーアジュニアの「建築家は娼婦だ」という言葉が示唆に富んでいる。パトロンの希望にはなんでも答えるというのが、有名になる建築家の必須条件みたいな面がある。シュペーアだけがなにも特別なわけではなく、野心のある建築家であれば誰でもシュペーアと同じ立場になり得るのだった。アルベルトシュペーアジュニア自体が高名な建築家なので、思うところが多いんだろうね。
ラストにはレニも(第一部以来)に登場して、締めくくりに華やかさを添えてくれる。
見応えがあって、いいシリーズだった。
mh

mh