百合

グッド・オーメンズ シーズン1の百合のレビュー・感想・評価

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天使と悪魔の友情物語という点で多大な評価を受けており、そのモチーフはたしかによかった。愛の存在である天使と決してそれを口にだすことができない悪魔の6000年の交流とか6話のまったく違う人間に憑依して現れた天使を瞬時に見分けて「素敵な洋服だ」と言ってやるところとかとっても良かった。
良かったのだが、実はこの作品は彼ら以外にも2組のカップル(魔女狩りの老人と隣人の占い師、魔女狩り見習いの青年と魔女の女性)とサタンの息子である少年の友人たちと家族、そしてなによりも彼らが所属する世界の上役達(天使と悪魔たち)というけっこうたくさんの登場人物が存在するのである。これらを1時間の話で偏りなく登場させて物語を進行させるのが難儀なことはわかるが、やはり無理があって、各人物のエピソードが万遍なく薄味になるという結果になってしまっている。3話の、天使と悪魔の時間をまたいだ交流を提示するシークエンスも好評だしそれ自体は非常に楽しいものだがもっと上手なつなげかたはなかったのかと思ってしまう。1話の赤ん坊を交換するシーンのシスターの目配せの説明もそうだが、全体的に説明臭くぎこちない。説明が鬱陶しい映像作品といえば本邦の作品という感じがするので、BBCでもこうなるのか…といったところである。
そもそもキャラの人外という設定上もう少しルール説明をていねいにするべきで、たとえばルート25に包囲されてロンドンから出られず炎の中を走り去る悪魔と、中年女性に憑依して「奇跡」で単車ごと浮き上がり脱出する天使のシークエンスなど、どうして悪魔はそんなチンタラ困っているんだ?と思ってしまう。炎上しても走り続けられる車というのはあまりにご都合主義なのでわたしのわからない元ネタがあるのかもしれない。ご都合主義といえばサタンの息子の友人たちにボロボロと倒されていく黙示録の四騎士もそうで、いくら炎の剣があったとはいえ…冒頭で人間に炎の剣を与えた話が出てくるわけだが神から賜ったはずの剣がどうしてwarの手にあるのかというのもスルーだし(失楽園する人間をみかねて剣を与えてしまうという造形自体はよくできていると思った。冒頭からすでに神意を愚直に実行する天使としては異端という印象付けができている)というかハルマゲドンを実行しないのならサタンの息子の存在意義はなくなるわけだがそれはいいのか?「人間らしさ」が善美なのだという結論は冒頭の神の声より明かされ同時にどっちつかずな天使と悪魔のふたりを祝福するものであるのでそれ自体はうまくまとめているという感じなのだが。
納得できないところはたくさんあるがそもそも原作小説がある作品なのでこれだけで評するのはフェアではないのかもしれない。6時間もあっただろという気もするが。しかしクロウリーのビジュアルが大変によかった。常にモデル歩きのガリガリで音楽とファッションと車を愛するジンジャーヘアの悪魔ってオタクの夢といえる。
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