れじみ

親愛なる白人様 シーズン1のれじみのレビュー・感想・評価

親愛なる白人様 シーズン1(2017年製作のドラマ)
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Netflixオリジナル作品で、1話30分前後で全10話からなるドラマシリーズ。
アメリカの名門学校、ウィンチェスター大学が舞台となる。
ある日学内で、白人による黒人仮装パーティーが開かれ、それをきっかけに起こる事件や出来事を、毎話それぞれの登場人物の視点で描いていく。
タイトルから察する事が出来るように、本作では未だアメリカに根強く残る黒人差別問題を取り上げている。
架空の学校と言う設定ではあるが、全米の優秀な学生が集うような場所でさえ、誰がどう考えてもおかしい黒人仮装パーティーなどが開かれてしまう。
存在の否定、言論の自由の弾圧、白人警官による黒人に対しての異常性、これまで幾度となく映画化されてきた黒人差別の問題は決して過去形ではなく、現在進行形であることが分かる。
その一方で、黒人による白人への抗議の仕方に問題はないのか、また登場人物が発する「なんでもかんでも人種のせいにするな」と言う言葉もまた印象に残る。
黒人が大統領にまでなれる時代である。
日本にいる限り、アメリカに住む黒人たちが常日頃から受けている差別を肌で感じ取るのは難しい。
彼らが抱える心の傷は想像を絶するだろう。
しかし、だからと言って全てを白人のせいにしていても根本的に問題は解決しないのではないだろうか、無責任ながらそう思ってしまう。
日本にいる者として気になるのは、アメリカに住む黒人たちのリアルな考えである。
本作に対して高い共感を得るのか、はたまた他人事として捉えているのか。
排他主義者であるトランプが大統領になった事で(だからこそこういう作品が作られるのだが)、間違いなく今後数年で人種問題はひとつの転換期を迎えるはずだ。
人種問題を取り扱った作品ではあるが、決して一から十までシリアスな物語と言うわけでもなく、ブラックカルチャーを取り扱ったり、恋愛を描いたり、それなりの青春ドラマにもなっている。
もっとも、物語の中に何か大きな一本の軸のようなものがあるわけではないため、どうしてもカタルシスには欠けてしまう。
どうやらシーズン2の製作が決まっているようで、確かに本作のラストは明らかにまだ続きますよと言った感じで終わっている。
シーズン2では是非カタルシスを得られるような物語を期待したい。
以前鑑賞したNetflixオリジナルドラマ「13の理由」(大ヒットを受けて早くもシーズン2の製作が決定!)には、昨年のアカデミー賞作品賞を受賞した「スポットライト 世紀のスクープ」を監督したトム・マッカーシーが参加していた。
本作には今年のアカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト」の監督であるバリー・ジェンキンスが参加し、なんと2年連続で作品賞を受賞した監督が受賞直後にドラマ業界に参戦する事態となっている。
「ラ・ラ・ランド」の監督であるデイミアン・チャゼルもNetflixでのドラマを製作する事が決定しており、ハリウッドでは空前のドラマブームが巻き起こっている。
すでにドラマと映画とを明確に切り離す理由はなくなり、今この流れに乗っていけない者は間違いなく時代の波に取り残されるはずである。
ちなみにバリー・ジェンキンスは本作では第5話を担当しているのだが、他の話と違って明らかにレベルが高く、わずか30分の物語の中に今も根強く残る黒人と白人の差をきちんと表現しているあたり、さすがとしか言いようがなかった。
さらにちなみに、これまたNetflixオリジナル作品である「ザ・ディスカバリー」の監督であるチャーリー・マクダウェル(マルコム・マクダウェルとメアリー・スティーンバージェンの息子)も第8話を担当している。
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