浅川

テスの浅川のレビュー・感想・評価

テス(2008年製作のドラマ)
3.8
19世紀イギリスの社会背景が見事に分かる作品だった。

夢想家で理想ばかりを掲げるエンジェルか暴力的な男アレックかの2択であるという点が、テスの可哀想なところであるといえばそれまでだが。 

本作の悪役はアレックなのであろうが、少なくとも結婚というかたちやテスを含めた家族の面倒を見るとテスに申し出ており、テスを犯した責任をきちんと取ろうとしている。そういった意味でも、アレックを一概に悪とは言えないのではないか。実際、テスが困ったところに手を差し伸べたのはアレックなのである。

エンジェルも一見真面目で清廉潔白な男に見えるが、実際は自分の過去のことは許されると思っているが、テスの過去の問題を許せない男尊女卑観を持っている。テスを迎えに来たというのも、黄熱病にかかって弱ったというのがいちばんであるようにも思える。

しかし、エンジェルよりアレックが良いという単純な問題でないのもそうだ。アレックがテスを犯したのは事実であるし、終盤でテスを囲い込んだアレックの態度を見ても、「自分が面倒を見てやっている」という観念からテスを縛り付けるのだろう。DV夫ではないが、暴力的でテスは生活は豊かでも幸せにはなれない。
テスが最後にああいった行動を取ったのはやりすぎだと思ったが、そうでもしなければ解放されなかったのであろう。

俳優陣の演技が良く、特にエンジェル役がエディ・レッドメインであったことに驚いた。アレック役の粘着質な演技も良く、テスが怯える理由も十分に分かる「ヤバさ」を感じた。
浅川

浅川

浅川さんの鑑賞したドラマ