みや

さよならぼくたちのようちえんのみやのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

【子どもの頃の純粋な気持ちの尊さ】

卒園ソング「さよならぼくたちのようちえん」をモチーフにしたオリジナルの単発ドラマ。

『Mother』に引き続き、水田伸生監督・次屋尚プロデューサータッグ第2作。

リレーは一番で野菜も食べていたし小学校のランドセルも買っていたのに、卒園を目前にしてなぜか突然幼稚園に来なくなった谷口洋武(橋本智哉)。

その理由を聞き出そうとするも先生である吉木万里(満島ひかり)にはぐらかされ、挙句の果てには「大丈夫、どうせすぐに忘れるから」と言われる始末。

そこである日、山崎カンナ(芦田愛菜)ら園児5人は幼稚園を密かに抜け出して、洋武が入院する病院へ会いに行く。

万里
「昔ね」
カンナ
「江戸時代?」
万里
「先生が幼稚園の時」
カンナ
「先生が幼稚園の頃? 何時代?」
万里
「平成時代。あるね、お友達がいたの。その子はね、足の、右足の小指がなかったの」
カンナ
「なんで?」
万里
「生まれつき、生まれつきなかったの。でもね、その子困ったことはなかったの。まあ、平均台とか難しいけど走れるし。人に見られるのもちっとも嫌じゃなかったの」
カンナ
「ふーん」
万里
「でもね、その子のお母さんは違ってたの。裸足で出かけようとしたらすっごく怒るの、靴下履きなさいって。わかる? 隠しなさいってこと」
カンナ
「内緒の足なの?」
万里
「うん。幼稚園の頃からそうで、プールの日はお休みしなさいって言われたの」
カンナ
「プール入れなかったの?」
万里
「うん。身体測定もお休み」
カンナ
「なんでかな?」
万里
「なんでかな。なんでだろうね。先生もわかんない。他の子がその子の足を見ると、ジロジロ見ちゃいけませんって言われたの」
カンナ
「なんでかな?」
万里
「なんでかな。大人がそう言うからそういうものなのかなあって思ってた。でもね、今になって思うの。その子プール入りたかったんだろうなって。もしかしたら、からかわれたりいじめられたりしたかもしれない。でもね、でもきっとプールすっごく楽しかったんだろうなって」

子どもだけで旅する道中はあまりにも険しく、一人ずつ脱落して警察に捕まっていくのだが、最後に残ったカンナは万里によって保護される。

そこで友人の死の恐怖を和らげるために会いに来たという真意を知った万里は、上記のエピソードを語る。

あくまで友達の体で話しており、物語上では明言されていないが、自分自身の体験談だと推測できる。

そして、カンナを病院へ連れて行き、洋武との卒園式ごっこが開かれるのだった。

本作では、手紙に代わる手段としてファックスが用いられ、洋武の手術の成功と「ぼくたちはおともだちです。おおきくなってもわすれません」というメッセージが卒園式当日に伝えられる。

他にも、抜け出した五人組の中に母に捨てられた悲しみを背負った少年が登場するのだが、『Mother』や『Woman』、『anone』に通底するテーマが含まれている点も興味深い。
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