このレビューはネタバレを含みます
グレイスが本当に罪を犯したかを軸に観ていたが
実際の記録もどこまで正しいのだろう。
調べる立場の男でさえ己をコントロールできず女に責任転嫁してばかりなのだから。
男たちは女を子供の頃から性的にそして労働力として消費する。
親も例外ではないため家の中で安全に生きることさえままならない。
男に経済力を独占された社会で生存戦略には尊厳を削られる。
暴力と権力で締め付けられながらの日常。
拒むと責められ、運が悪いと暴力からの死。
妊娠が死にとても近い。
愛や余裕は特権。
女の言うことは軽んじられ男に都合が良いことしか真実として受け入れられない。
「男は生まれながらにして嘘つき」という言葉が重みを持って刺さる。
社会的弱者である女性同士の連帯が難しく実現したとしても限定的。
現代ではこういったことは殆どないことにされているが
まだ根強く残っている問題ばかり。
フェミニズムを軽んじる人は現実を知らなさすぎる。
歴史的に王妃でさえ寵愛が他に移ればイチャモンをつけられ処刑された例が数少なくないのだ。
女に必要なのは今も昔もとことん運でしかない。
どんな家に生まれ、どんな親で、どんな人と、何と出会うか。
世論とフィクションの持つ力をしみじみと感じた。
グレイスが実際に罪を犯していたとして
貧しさの中で死の恐怖に怯えながらとった選択を
現代の誰が非難できるだろう。
監督も脚本も女性で納得させられた。
これは女性にしか作れない。
観る人によって大きく解像度が異なる作品なのだろう。
他の方の感想でとにかく女優がエロかったというのを見てしまい溜め息。
加害性に無自覚な人には何もわからないまま。
あんなに明確に「これも消費するのか」というメッセージが込められていたのに。