北斗星

マザー 無償の愛の北斗星のネタバレレビュー・内容・結末

マザー 無償の愛(2018年製作のドラマ)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

最終話まで見ました。


【以下6話までの感想】
日本版のドラマも見てました。が、韓国版の方はまるで『逃亡者』のようなスリリングなストーリー。
偽の母娘で逃げている間、行く先々で問題が起こり毎日安眠できる家もないため転々とする2人。
息つく暇もなくかなりハラハラする。

そして幼児虐待とその母親たちを描いているが、フィクションとは言えドキツすぎる(日本ではこの内容では放送は無理でしょう)。

とにかく主演のイ・ボヨン始め、各マザーみなスゴすぎる!主演のイ・ボヨンはすごい美人でクール。しかも何か人を寄せ付けず影がありミステリアス。魅力的すぎてこの人のことは男は放っておけないでしょう。

同じくらいカッコ良くて存在感が際立っているのが、スジンの養母の女優さん(チャ・ヨンシン役)。
日本で70過ぎでこんなに素敵な年の取り方していて、ザ・女優!みたいな人は残念ながらいない。まるで気位が高い昔の外国人女優みたいです。

後半、実母もすごい人だと解りました。
一本筋が通ってます。
口数少ないけれど、この母親もかなり迫力あり。


スジンが床屋のおばさんが実母だと知ったときの反応は凄まじいものがあった。普通は激怒して相手に感情をぶつけて泣き叫ぶのではないかと思ったが、スジンの怒りの表出の仕方は違った。

私もマグカップがそばにあったから試しに強く握ってみたけどびくともしなかった。スジンのあの行動は思わずとったのでしょうが、怒りの凄さが泣き叫ぶよりも見ている方にストレートに伝わってくる。ものすごく衝撃的でした。

韓国の人は(特に親世代)感情をそのまま出すイメージがありますが、スジンは違う。
時に感情が凍りついてるのかと思うときがあるが(特に怒りの感情)、時々心から泣いているシーンもあるので、また少し違うのかも知れない。

また全話見終わった時に書きます。
とにかく、次が待ち遠しくて仕方ない。どハマりしてます。



【24話・最終話までの感想】

韓国での実際の評判を見てみたくて何度か検索してみましたが、ない!
何で??
日本人の感想や、3分毎に泣けるとか‥。私はそんなことはいいんです。泣くのを目的にドラマ見てるんじゃな〜い。。


見終わった後、現地のこのドラマ観てた人に感想を直に聞いてみたい気持ちになりました。


しかし韓国ドラマは何故こんなに内容が充実していて面白いのか?製作者、演者が優秀なのかな?
長尺だけど飽きないし、すぐに次が観たくなる。

世界でも闘える映画やドラマ。

日本のドラマは残念ながら衰退していく一方。でも元々は日本版が原案なんだけどなあ…。
せめてあまり縛りがない映画は頑張って欲しいです。




●さて、感想。


50日にも及ぶ過酷な逃亡生活。
行く先々で親切な人たちに助けられます。

実母、養母、姉妹、ヨンシンのマネージャー兼おじさん、養母の担当医、クララ先生。

裁判の証言者としてスジンを擁護してくれる、ヘナの学校の保健室の先生、スジンの研究員の元先輩、ヘナを虐待していたソラクの元恋人の妊娠中の女性。

遊園地で出会った父子しかり(お父さんは車中、息子から、もし悪い人を見つけたらパパはどうするの?と問われ、警察につき出すよ!当たり前だろと言っていたが…)、お寺の住職しかり。


でも、子供(ヘナ)にとってこの危険な旅は余りに過酷すぎる。
スジンや周囲の擁護者の気持ちも痛いほど解る。

けれど、子供は逃避行中、安心して眠れた日はあったのか?体調を崩してしまわないか?そして、何故あんなに賢くて大人なのか?
ユンボク(ヘナ)がもし、安全な家庭に産まれていたら本来はどんな子に育っていたのか?つい想像してしまう。

被虐児故の賢さ、大人のような振る舞い、ヘナが生き抜くために必要な術だったろうけど、観ていて辛い。

スジンと離ればなれになる時にだけ、ヘナは素に戻るような気がする。

いつも泣くことを我慢して、平気じゃないのに大人に笑いかける。

いくら被虐児でもこんな9歳がいるのかな?と正直思った。

まあ、ホ・ユルさんが凄すぎるのでしょうけど…。



ラスト近く、スジンや姉妹や子供たちで、料理の得意なイジンが食事を振る舞いながら談笑するシーン。

温かい食事を、皆で囲む。
幸福を象徴しているシーン。
妹の息子以外全員『女』だ。
ただ、男の子はまだ小さいから、あの中では男でも女でもなかったような気がする。

やはり、皆『女性』。すでに母親になった女(イジン)やスジンの実母もいれば、母親になる決心をした女(スジン)、末っ子も将来母親になるかもしれない。


実母、クララ先生、養母、ヘナの実母、ヘナがグループホームに居たときの気難しい先生。そしてスジン。

私は、『マザー』って、この母親たちの集合体なのではないかと思うのだ。

誰が正解だとか、あの母親が全部悪だとか、云えない。


ただ、スジンやスジンの実母のように全てを投げうって、罰を受ける覚悟があり、一生を(少なくとも心は)捧げると、そこまで肚をくくれるか??



少なくともスジンは、ユンボクとの辛い逃避行の『一瞬』が一番幸せだったとドクターに話した。

そして、何度か、あの日あのヘナに会ったら私はまた同じことをするだろうと静かに語る。


ヘナが自分には愛してくれる母親がいること。そして何より自分に誇りを持つこと。そうしたら堂々としていられる。全てスジンに教わった。

そしてスジンも、ヘナに出会えなければ、スジンの心の雪解けはあり得なかった。母親たちとの和解も当然なかった。
スジン自身も人を(ユンボクを)愛し始めることで、自分を赦し、そして愛し始めた。
ずっと止まっていた時計がまたカチコチ動き出したのだ。

このドラマの『必然的な誘拐』の動機……。

私情を一切挟まずずっと追いかけてきた刑事、世論、他のすべての家族の何故??という問いかけの答えなのでは?と感じた。


くしくも被虐児を助けたことが、主人公の人間的成長を促した。

周りの人と(家族、他人)助け合ったり、親切を受け取ったり、心のままに笑いあったり。


スジンがユンボクに『鳥が何故あんなに遠くまで行けるかわかる?星座を目印にしているからよ』そんな何千キロも旅をする渡り鳥や、お互いを想い合う2人に思いを馳せ重ねると、涙が止まらなかった。


思えば2人の逃避行はスジンがヘナに『あなたが母親を棄てるのよ』から始まった。
この、子供の全世界がひっくり返ってしまうあまりにも衝撃的な言葉から。

ラストシーン。
ユンボクが、『ヘナも幸せだからヘナのお母さんにも幸せになって欲しい』。

そしてユンボクもユンボクのお母さんにも幸せになって欲しい。


素直にそう感じました。
北斗星

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