Kaji

100日の郎君様のKajiのレビュー・感想・評価

100日の郎君様(2018年製作のドラマ)
3.8
ギョンスが膝枕をされつつ眉毛を撫でられる、慈しみに満ちたシーンを引きやドローンでなく、ヒロインの目線で撮った監督はファン心理とフェティシズムの解像度が高くて絶賛したい。ブラボー!

ギョンスが演じた常に気難しくて仏頂面なのに、不思議と内面が見えてくる世子は、知性と素朴さが相まってすごく味があったし、記憶喪失というスピンが最後まで影響している脚本もサスペンス・コメディ・ラブロマンスを横断しながら展開の滞りが感じられなかった。
時代劇だからか各キャストのオーバーアクトもあるけど「愉快な仲間たち」的な存在に翻訳して韓ドラのくせを緩和している演出はさすがスタジオドラゴン。他の制作ドラマにも共通する魅力。

権力闘争を濃く描きつつ、加算されていく不幸から脱出する術を模索していく人物たちの人物造形が良かったし、特に心が定まらない王様を演じたチョハンチョルの最後のスピーチがすごくすごく良かった。
「ああ、この人は内省ができる分優しくて、闘争がほんとに苦手だったんだろうな」って思ったし、肩の荷を下ろす決断を悲劇を体験した息子に対して話す父親の優しさがあって名演だと思う。
星州のホンシクパパも、常に自分より周りを案じているめっちゃいい人ですごく好きだった。
世子嬪にハンソヒ、悲恋を抱えながら妊娠すら政局に利用される身の上で彼女1人でサバイバル姿は人の中の「芯」のような意思の強さと処世のために崩壊寸前の善意があって、難しい役どころを凄まじい透明感で見せたのはすごい。
最終回の「口説き技」が日記っていうアイテムを出したすごくオールドスタイルなのが世子様らしくて笑

終始、背景に暗く重い設定があるドラマだけど、詳らかになったそれぞれの不幸や悲しみを思いやってみんな幸せになってほしいなって思えるドラマだった。
Kaji

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