よねちゃん

そして、生きるのよねちゃんのレビュー・感想・評価

そして、生きる(2019年製作のドラマ)
4.2
本作は、『君の膵臓をたべたい』、『君は月夜に光輝く』で有名になったラブストーリーの帝王月川翔監督と脚本の岡田恵和、音楽は松村崇継という最強タッグで実現した作品。坂口と岡山が演じた男らしい頼もしさがどこか足りない男性に対して、過去にとらわれず前を向いて力強く生きていく強かな瞳子を有村架純、元バイト仲間の韓国人の旅人で自由人ハンちゃんを知英が好演。一方で、坂口と岡山の男性俳優陣は、演技をしていないようにみせて、力みのないしっかりとした演技をするという高度な芝居で魅せている。それゆえ、4人其々のキャラが好対照に際立たせることに繋がっている。この手のラブストーリーは、別れたカップルが寄りを戻すというセオリーを貫徹する作品が少なくないが、東日本大震災やテロからの立ち直り、流産の苦しみや恐怖など、起きうる環境変化に瞳子や清隆らが単に抗うのではなく、これまでの出来事全てを受け入れた上で人生の新たな目標を見つける生き様を其々描き切った岡田恵和ならではの秀逸な脚本から、繊細に演出できる月川監督ゆえの対照的に登場人物に光を当てる演出表現が素晴らしい。そして、登場人物の心情の揺れにぴったりとあった松村の音楽が情感を引き立たせる。作品の中で若手俳優陣を盛り立てている光石研と萩原聖人のベテラン勢の演技も随所に光っている。作品中で、展望台から気仙沼の町並みを眺めながら、理容院店主を演じた萩原が清隆らに語ったセリフが胸をついて、今も忘れられない。劇中にしても、東日本大震災に携わる人々の苦しみやその解放を巧みに表現した岡田恵和に頭が下がる思いがした。この作品から学ぶことが物凄く多く、作品としても、人生論、恋愛論としても、どの切り口からでも魅せる稀有な作品に仕上がっている。是非、ご覧頂きたい。
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