韓国ドラマの最高傑作だ。これ以上の作品はもう生まれないだろう。不愛想で無礼な態度のイ・ジアンの仕事の姿勢、そのイ・ジアンをいたぶる借金取りイ・グァンイルの非情さに、序盤は観続けるのが辛くなる。いつもうつむき加減で地下鉄に乗り、人生を諦めたような表情で歩く主人公のドンフンからは会社員の悲哀がプンプン匂う。最初はドラマに没入する要素が皆無である。にもかかわらず、である――。イ・ジアンとドンフンを巡るいつかのエピソードが絡みあい、本当に少しずつ、少しずつ、氷を氷でとかすぐらいのゆっくりとしたスピードで分かり合い、お互いが抱えた弱さや過去を乗り越えようとする。イ・ジアンのため息が少しずつ柔和な表情の中で消えていく様子は、本当に心を動かされた。主人公2人の演技があまりにも素晴らしく、一つ一つの所作に心がこもっていると思えた。ドンフンは、最終話まで表情を変えなかった。一人で食事をしながら号泣するシーンは、何年経っても心に刻み込まれている。ただ、ラスト。本当にラストのシーンで見せたドンフンの表情は素敵だった。この表情のためだけに、全話があったとすら思えた。映画では表現できない、ドラマの素晴らしさを教えてくれた珠玉の一作。
