keith中村

TUNAガールのkeith中村のネタバレレビュー・内容・結末

TUNAガール(2019年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 監督の安田真奈さんは大学時代の映研の2歳後輩で、我らが映研の出世頭。
 なので、彼女の作品はデビュー作(劇場デビューの「幸福のスイッチ」という意味ではなく、3分の自主映画「乾杯」)から観ています。
 
 安田作品が繰り返し提示するのは、「ネガティブな女の子が一歩進む決意をする」というプロット。
 ただ、今回の主役小芝風花ちゃんは、明るさだけは有り余るほど持っている。ネガティブな役どころはもう一人の女の子に振り分けられている。ほかの同級生や先輩も、それぞれ悩みを抱えており、いわばひとりの人格を分散して配置させた構造となっていて、そこに群像劇的な面白さが醸成されている。
 今回の安田作品における主役の役割は、むしろ周囲をまとめあげ、つなげるハブとしての意味合いが大きく、そこはタイトルにも「TUNAガール」=「繋がる」として宣言されている。
 
 特に、中盤にある、同級生の太った男の子が喧嘩の仲裁で泣き出すシーンは、説明がまったくなされないんだけれど、「ああ、この子は高校まではいじめに遭ってたんだ。大学という『知的水準』が同じ仲間が集まるところで、ようやく安らげる場所を見つけたんだ。それが壊れかけそうになって泣いてしまったんだ」ということが痛いほどわかる。実に素晴らしい。
 
 終盤は滝田洋二郎監督・一色伸幸脚本による「僕らはみんな生きている」での真田広之の演技にも比肩する、「名ブチキレシーン」があり、ここは「僕らの~」を観た時と同じく感動で心が震える。
 
 小芝風花ちゃん、ほっしゃんというネイティブ関西人が、これまたネイティブ関西人・安田真奈の書いた自然な会話を演じることで、1ミリも、いや、1マイクロも1ナノもぶれない安定感が生じて、観ていて心地がいい。
 
 ラストショット、ズームの潰し画で、カメラに向かって疾走(=ツナ)する風花ちゃんが素晴らしい。
 これ、私が学生時代に撮ったある自主作品のラストショットにかなり似てて、もしや安田監督が真似してくれたんなら、光栄なんだけどな~。いやいや、ないか(笑)

keith中村さんの鑑賞したドラマ