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火花のotenbalunaのレビュー・感想・評価

火花(2016年製作のドラマ)
5.0
本も映画も観てなかったけど、すごく心を鷲掴みにされる作品だった。20代から30代にかけてがむしゃらに夢を追って、でも段々とそれぞれが現実に直面せざるをえなくなって、もがき苦しむ。その姿に共感しすぎて辛くなったけど、登場人物たちが幸せになる事を願って最後まで一気に観た。それぞれの10年を見守って共に生き共に泣いた。10話かけてじっくり描かれたのがとても良かったと思う。

まず、映像が詩的で美しい。撮り方も独特で、俯瞰だったりアップだったり長回しが効果的に使われててとてもリアルな姿が映されていた。そして音楽も良くて、オープニングのアンニュイな感じも好きだしエンディングも印象的で良かった。
キャストは、好井さんと村田さんが出ててびっくりしたけど、2人ともお芝居が自然ですごく良かった。浪岡さんは他作品で観て強烈な印象を受けてた役者さん。本作品でも表情で多くを語ってて特に後半の神谷はすごかった。そして林さんも売れなさそうな芸人姿から華やいだ姿までの変化が凄かったし、漫才が本当にうまくて、作中の漫才で普通にお笑いとして笑った。あまり表情豊かではない徳永だけど感情がよく伝わってきて本当にすごい役者さんだと思った。他の役もそれぞれ個性的だけど、配役がぴったりだった。本当に細かい役までキャストが豪華だった。個人的にはカクスコの中村育二さんと山崎直樹さんに再会できたのが嬉しかった。

ちょうどNHKオンエアバトルをやってた頃、自分も社会人として駆け出しで、辛い時とかたくさん笑わせてもらったし、頑張ってる芸人さんの姿を励みに頑張れた。その後他で活躍される方もいたし、面白いのになかなかという方も沢山いた。ネタを純粋に楽しめる番組が減って、とにかくインパクトがあったりキャッチーなネタをする人がウケる時代になってしまい、それに乗れない人は面白くてもテレビでは売れず、芸人の使い捨てのようになってしまったので私はお笑い番組をあまり見なくなってしまった。今回、芸人役でたくさんの芸人さんが出てて懐かしく感じたり嬉しかった。
みんな若手の頃は、自分のやりたい事や求めてるものが強い「トガってる」時代がある。その後求められてる物を理解して取り入れていけると売れていく。でもきっと「売れる」漫才とそれぞれの理想の「面白い」漫才が違う人も多いだろうな。徳永の葛藤にすごく共感した。
たまに芸歴が浅いのに急に売れる芸人さんもいるけど、芸歴10年くらいでようやく芽が出る芸人さんも多い。あまり売れてない状態で10年間続けるってしんどいだろうな。バイトもしないといけないし、続けてるからって売れる保証はないんだもんね。つくづく芸能界の仕事は大変だと思う。だからこそ又吉さんの書いた神谷の言葉に救われた人も多かったんじゃないかな。多分何か夢を追い求めて諦めた人全てに刺さる言葉だと思う。
本当に良い作品だった。改めて原作も読もう。
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