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チェルノブイリのsonozyのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
4.0
『ウォーキング・デッド』『ブレイキング・バッド』のヨハン・レンク監督による、チェルノブイリ原発事故をリアルに描いたというHBOの全5話ドラマ。
概ね事実に基づくという事前情報で、当時の緊迫感がすさまじく、最後まで引き込まれました。

主役となるのは事故処理を担当することになった2人の男。
核物理学者でRBMK炉の専門家ヴァレリー・レガソフ(ジャレッド・ハリス)と、ソ連閣僚会議の副議長のボリス・シチェルビナ(ステラン・スカルスガルド)。この2人のバディストーリーとも言える展開となってます。
また、核物理学者の女性ウラナ・ホミュック(エミリー・ワトソン)が2人をサポートする重要な役割で登場しますが、彼女は架空のキャラクター。

見た後で解説サイトなどを見ると、内容やキャラクター設定にかなりフィクションが盛り込まれていたり、一番重要な事故原因が、現在では「運転員の過失/規則違反説」から「原子炉の制御棒の欠陥説」に変わっていること(本作はこの2つをうまく混在させてますが)などから、あくまで実話をベースにしつつのリアリティ溢れるフィクションドラマとして見た方が良さそうです。

特に、事故当日、原子炉の運転実験を指揮した副技師長ディアトロフ(ポール・リッター)が悪党・首謀者として描かれていますが、実際はここまで酷いキャラではなかったらしい。

いずれにせよ、“国家機密”という名のもとに、体面を保つため欠陥や不都合を隠蔽し虚偽で固め続けた状況が生んだ事故であることは間違いないですね。

何も知らず消火活動にあたった消防士ワシリーの妻リュドミラ・イグナテンコ(ジェシー・バックリー)が、禁止されている夫の病棟に入るシーンでは、高線量の放射線にさらされた人体に何が起きるのか、そのむごさを見せつけられます。。。

貯水槽の水を抜いた3人の勇敢な職員(これが成功していなければ更に被害は膨大化)。
気温が高い中、全裸で(これは実話かどうかですが)穴を掘り続けた400人の炭鉱夫。
ロボットが機能せず、人海戦術となった原子炉の屋根上の作業(被爆限界の90秒という作業時間)や、動物・家畜の駆除(銃殺)作業などに駆り出された60万人もの一般の若者たち・・・

実際の犠牲者数は永遠に分からない(概算では4,000〜93,000人。政府公式発表の死亡者数はわずか31人!!)とラストに出てきますが、被爆の影響で亡くなった方々の実際の人数は想像を絶する数なのではないでしょうか。

2016年に放送されたNHKスペシャル「原発メルトダウン 危機の88時間」も見直しましたが、福島原発事故も、東日本全域に人が住めなくなるような状況になる可能性は十分にあったということを改めて思い出しました。
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