加瀬

ワンダヴィジョンの加瀬のレビュー・感想・評価

ワンダヴィジョン(2021年製作のドラマ)
3.7
前半と後半で物語のジャンルは大きく変わる。前半は新婚である2人のほんわかした物語でありフルハウス的ホームコメディであった。
ドラマならではのアプローチで世界観を広げる戦略は流石MARVELだ。これを映画でやるには難しいだろう。
時折、そのコミカルさとは裏腹に怖さが垣間見える。
1話の食事会におけるラストシーン等、劇中には観客と思われる人の笑い声が差し込まれ、度々テレビ局の制作室のようなものが映ったりと2人の新婚生活そのものが創作物かのように見えてくる。ヒドラによって人体実験されたワンダとトニースタークが作った人工知能ジャービス他によって作られたヴィジョン。この生い立ちも相まって創作物としての側面は強まる。
ビジネスに使われるヒーローの物語とも受け取れた。
表向きはコメディだが、読み解けばシリアスな作品にも見えてくるのが魅力的だった。

前半、色々と考察を張り巡らしたが4話で大筋が見えてくる。
インフィニティウォーでの結末を考えるとワンダの妄想の話なのかと考えていたが、ワンダの能力による造られた世界、ヴィジョンだった。これだけでもワンダの能力の凄まじさが分かるが、本作「ワンダヴィジョン」はワンダのヒーロー誕生譚としても機能していた。
同時に家族の物語として展開していく。前半で見たあれほどに温かな家庭を、1度手に入れた幸せを自ら手放さなければならない。家族の消えゆく姿に、街を救うことを諦めた8話のワンダを見ていると9話のワンダとヴィジョンが見つめ合いながらお別れする悲しさには心打たれた。
ワンダとヴィジョンへの愛着が深まったという感想をよく見かける。これこそが本作が配信される意味として十分だろう。
加瀬

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