9番

硝子の葦 ~garasu no ashi~の9番のレビュー・感想・評価

硝子の葦 ~garasu no ashi~(2015年製作のドラマ)
5.0

『ラブホテルのオーナーの妻、節子は実母から虐待を受けて育ってきた。
彼女の歳の離れた夫(オーナー)は実母の元愛人。また彼女自身も顧問税理士と不倫を続けていた。
ある日、夫が交通事故を起こし意識不明の重体となってしまう…。』

これだけで、そのドロドロとした人間関係が迫ってくる。
だが、これはまだまだ序の口。愛憎渦巻く展開が待ち受けている。

ストーリーにはもう一つの虐待が描かれ、それが極めて重要な鍵となっている。

さて、映像については全体的に抑えられたトーンである。街も海も花火でさえも、それぞれの人物が抱えている闇が薄らと掛かっているようだ。

ラブホテルは田舎の田畑の真ん中にあり、まさに陸の孤島のようである。
きっと建設時は周りの住民に反対をされたのであろう。そんな〝白い目の巨塔〟は、中で暮らす節子たちを飲み込み静かに佇んでいる。

役者さんは、主人公の節子を演じる相武紗季さんの目がとても印象的であった。この人はその目で本当に物を見ているのか?
瞬きしない硝子のような両眼が何を考え、何を企んでいたのか、それは最後に分かることとなる。

また、その他の役者さん達も個性派揃いである。
夫の奥田英二さんは節子の目を開かせようと愛を注ぐ。実に渋い好演であった。

実母役の多岐川裕美さんも鬼母ぶりも見事、
鬼をも殺してしまうくらいの怖さがあった。

子役の渡邉このみちゃん
私が小学生で同じ組にこんな子がいたらきっと好きになるだろうなという可愛くて芝居が上手い子役さん。
喋らなくても他人に伝えられる力を持つ。その演技は凄い。

演出について、
三島監督の作品を何作か観ていればピンとくる手法が見られる。
特に私は手のシーンが好きだ。
相手の手を掴む、離す。
そのタイミング、強さは時に台詞を凌駕する。
今回の手は同じ辛い境遇を味わった2人の絆そのものだった。

サスペンスドラマはあまり観ないのだが、本作は非常に面白かった。
哀と愛が入り混じった湿原に足を取られ、自分の体が沈んでゆくような錯覚を感じた。
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