「上海遊記」を読んだことはない。
中国の黎明期を芥川の目線で描く。
雑然とした上海の街、豪華絢爛な中国雑伎、美しい雨や血の風景。政治、民衆、日本から見た中国と芸術。
最低限の言葉と説明で、四ヶ月の滞在と大正時代の中国を物語る渡辺あやの脚本に、喧騒に気品が現れる映像美を表す加藤拓の演出。そして、最新の映像技術。
芥川の死様に合わせた夢の表現。
悲しみを表すのに、
血を滲ませたクッキーを使う。
美しい青年ルールーと薄幸の玉蘭。
男娼、そして美しくも不幸な美女。
中国を体現する登場人物は、
一切台詞を言っていない。
演技と仕草、そして道具。
効果的で美しい表現。
芥川は最後に雑伎の男優である緑牡丹の演技を絶賛する。美しい衣装を着る緑牡丹は見事に手鼻をかむ。
絶妙に中国という国を表現する、
芸術的なドラマであった。