三浦半島の海岸近くに住む少年・紫郎は2歳の時、海の事故で両親を亡くし、祖母に育てられていた。 紫郎は『あそこに行って岩に耳をつけると、お母さんの泣き声が聞こえる』と言う。 紫郎は学校が終わると必ず海へ行き、船で洞穴へ入るのだった。 そんなある日、紫郎は人が登れそうもない断崖の上に不気味な老人の姿を見た。 そして“亡者が出ると死者が出るという祖父の予言どおり、翌朝海に死人があがった。 紫郎はある殺人事件をきっかけに旧日本軍の地下要塞に興味を持つようになり、紫郎にも身の危険がせまる。 軍隊、欲望、殺人と、少年とは無縁だったものが、少年の周囲に繰り広げられ、やがて少年の心そのものだった海が欲望の海へと変わってゆく…。