深獣九

サード・デイ 〜祝祭の孤島〜の深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

サード・デイ 〜祝祭の孤島〜(2020年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

引き潮のときのみ渡ることのできる島「オシー島」で体験する、奇妙で恐ろしい出来事。〈夏〉と〈冬〉それぞれ3話、合計6話で構成される。〈夏〉は、ジュード・ロウ演じるサムの物語。〈冬〉は、ナオミ・ハリス演じるヘレンの物語。謎めいた状況はそれぞれが複雑に絡み合い、最終話ですべてが明らかになる。のだが……。
島には、ケルト神を由来とする宗教が根付いており、島民はすべからく信者だ。「島は世界の中心で、オシー島のバランスが崩れると世界のバランスも崩れる」と思ってている。ここは狂信者の島だ。主人公たちは島の存続をめぐる争いに巻き込まれ、自分の過去とトラウマに向き合うこととなり、精神が崩壊してゆく。

当然、サムとヘレンの物語なのだが、感想文を書いているうちに、もしかしたらそうではないかもしれないと考えるようになった。
これは、“オシー島”の物語ではないかと。島民の分裂、息子の死と転生、神父の交代劇、エポナの殉死と復活、サムの狂気、エリーの心変わり。すべては島の意思によるもので、人間は操り人形でしかない。そう考えると、また異なる恐怖が感じられる。
最終話の余韻は物語の継続を示唆し、さらなる大きなうねりを期待させる。楽しみしかない。


以下、<夏>を観終わったあとにメモした感想。

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<夏>
ザラザラした映像、浅い被写界深度で人物以外に何が映っているのかはっきりしない、少し動くだけで人物の顔もぼやけて見える、極端な顔のアップ、これらが鑑賞者の脳に不安と焦りを掻き立てる。主人公の置かれた立場がはっきりしない脚本に加え、映像による効果が絶大だ。
結末まで何が起きているのか、誰の記憶が真実なのか、謎しかない。
とにかく、主人公の立場がはっきりしない。トラブルを抱えているようだが、物話が進むにつれてそれが真実なのかもわからなくなってくるし、島民の企みは度を過ぎている。島が世界の中心だなんて妄想もいいところだし、神父がいないから世界が滅亡するなんてのもイカれてる。だが、島民の思いは強い。島を守ろうとする結束は、やはりこの物語がカルトを題材にしていると言えるだろう。
グロ表現は控えめで、死人も少ない。だが、この小さい島にある真の狂気が、私の心を揺さぶる。「カルト」「伝承」「生贄」「血」こんな言葉たちが脳裏に浮かぶ。

でも、映像美を楽しむ作品かな。

<冬>
母と娘の関係があやうく、観ている者の不安が加速してゆく。第5話から一気に真実が明らかになる。安心を得られるとともに、恐怖は倍増する。死んだはずの息子が生きていたが真か虚か。謎は明かされない。

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次の季節を待つ。
深獣九

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