umeko

カリフェイトのumekoのレビュー・感想・評価

カリフェイト(2020年製作のドラマ)
-
第1話目で、ドキュメンタリー映画『ラッカは静かに虐殺されている』のショッキングな映像が頭をよぎり冒頭からかなり身構えたけれど、みぞおち辺りの鈍い痛みを抱えながら最後まで観た。

正確にいうと〝最後〟なんてない。

このドラマのシーズン2があろうと無かろうと、ハッピーエンドは絶対に来ない。
長い歴史を辿ってきた宗教戦争(もはや宗教の名を借りた別物…)は未だ終わりが見えないし、終わる為の戦争ではなく寧ろ始める為の戦争のようにみえる。

日本に住んでいる私たちは〝平和〟について考える時、生温い日常の中に身を置いて、想像力に欠けた〝戦争〟を想像する。

それが良いことなのか、良くないことなのか私には判断が出来ないけれど、
他人事のこの傍観は、本当に他人事なのだろうか?と時々恐怖する。
何も知らずに、知ろうともせず、間接的に私たちは人を殺し続けているんではないのだろうか。


『ラッカは静かに〜』や『ババールの涙』は敵対するイスラム国が如何に残虐かを描いていたけれど、このドラマを観続けたのは、
ISに属するある家族からの視点と、ヨーロッパに住む未成年たちがはき違えたイスラム教を信仰しシリアの過激派に憧れを抱き自ら志すように洗脳されていく様が描かれていたからだと思う。

彼らの行く末、
特に外国人は、騙されてシリアに渡ったり、拉致され無理矢理に結婚させられたとしても被害者ではなくテロリストとみなされ本国には二度と戻れない。


世界中の若者がISを目指し勢力は拡大しているという記事を目にした時、言葉を失ったし私には全く理解できなかった。

どのような思考回路になってんだと疑問だったのだけど、
不穏な浸水はじわりじわりと身体の自由を奪い気づいた時には溺れてしまっている。たぶん溺れていることにも気づかないのだと思う。
というか、溺れたら死んでしまうという恐怖すら奪っているんだものね。。

ラッカは制圧したと報道されていても、実際に戦闘員達は逃げ出し世界中に存在するし、どんなに過激派を掃討したとしても人が死ぬ度に憎しみと、そして新たな思想がうまれ続ける。


〝ジハード(聖戦)〟と聞くと異教徒を征服する為の戦いだと思って身構えてしまうけど、本来のジハードの意味とはかなりかけ離れてしまっているんだね。
人びとを正しい行いへ導く為に宗教が生まれたはずなのに、無神論者が宗教権力を振りかざして搾取してるようにしかもう思えない…

悲しみの先に誰もが築ける共通の平和はあるのだろうか。
umeko

umeko