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わたしたちの教科書のSUのレビュー・感想・評価

わたしたちの教科書(2007年製作のドラマ)
4.0
1〜7話は正直冗長で退屈な部分もあり、昔のドラマの1クール12話を遵守した結果、間延びした展開に感じたが、いざ8話からの第二部、法廷での裁判がメインの話が動きだすと、毎話クライマックス級の感動が押し寄せ右肩上がりで釘付けに。

伊藤淳史が主人公のくせにあっちいったり、こっちいったりとめちゃくちゃ流されやすい性格であるが故にイライラする。が、いじめを題材にしつつも直接的なイジメシーンはほとんど出てこないという斬新さと、またいじめっ子だけが悪いという、金八をはじめ従来の学園ものの既成概念からさらに一歩踏み出して、いじめっ子が抱えるイジメ開始の要因についても描いて説得力を持たせ、では校内にイジメが確認できたとき、何が問題で何をしなければならないのか?を投げかけるというところに重きが置かれているところが素晴らしい。

何かしらの事情を抱えた教員たち=聖職者ではないということを提示しつつ、経験が浅く学校に関して不慣れな臨時教師の目線を通して、視聴者も学校に隠された実体を徐々に暴いていく。
その過程でネグレクト、若年性認知症、援助交際、モンスターペアレンツなど、様々な問題を実にさりげなく盛り込んだ脚本は、当時主なトピックとしてかなり先をいっている。そして最終回に明かされる衝撃の真相に涙。

単純にイジメの首謀者を締め上げてもイジメはなくならない。
そして、大人はいじめがあることを信じたくなくて、大人も大人でイジメが怖い。そして安全安心な同調圧力に屈することを選択するという、現在の日本にもいまだに蔓延している状況に、鋭く切り込んでいる。

本当に嫌な奴だなあと思っていたら、実はこんな思惑で、守りたいものなどやむを得ない自身があったなど、張り巡らされた背景がしっかりしており、一概に責められない理由もあったりと、とにかくいろいろ考えさせられる。

坂元裕二脚本作品のキーとなるアイテム、「手紙」は今作でもとてつもなかった。ラストの暗闇から射す光のような内容のある手紙の内容はこの作品のメッセージが凝縮されていて、胸に突き刺さる内容だった。

今や貴重ともいえる、笑いなしの佐藤二郎の熱演も必見。
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