Ness

別世界からのメッセージのNessのレビュー・感想・評価

別世界からのメッセージ(2020年製作のドラマ)
5.0
満点なんて一度も付けたことないけれど、付けます。

2013年公開の「The Institute」を原作に製作されたAMCドラマ。ジェイソン・シーゲルが製作総指揮・脚本・主演。結論から言うと、今まで観た中でも最高に感銘をうけたドラマだった。

まず音楽はアティカス・ロス等が担当。同時期公開の「ソウルフル・ワールド」を思わせるヒーリング音楽が最高に良い。

そして圧倒的な脚本。筒井康隆のような虚構に次ぐ虚構。虚構内での現実。ドラマ内でのゲーム。それ自体が心理セラピーかのような構造。ラストの2つ質問があったシーンはすべての迷える人に刺さるんではないだろうか。

①特に友達や恋人もおらず、ただ働くだけで何も変わり映えのない日々を過ごす"普通"の人であるピーター。
②美術学校を休学しトランス女性として自分らしく生きようとするが、被害者意識が強くどこにいっても心から馴染むことができないシモーン。
③寝たきりになった長く連れ添った夫を労り、いつだって場を読んで他人を労り、決して間違ったことを言わない老婆ジャニス。
④圧倒的に頭が良いが、それ故に低いレベルに合わせること・他人に合わせることができず理解もされにくい陰謀論者風味の黒人フレドウィン。

まったく違う感性の人々がぶつかり合い、協力し合う。特にジャニスとフレドウィンのキャラクターが良すぎて泣けた。うーんうまく描けない...。笑

とにかく、作者は"人それぞれが自分の意思で自分の領域から一歩踏み出す"ことの可能性を心から信じているのが伝わった。それは普段から自分が考えていることとすごく近くて、メッセージが心に沁み渡った。ジェイソン・シーゲル自身の体験はどこまで反映されているんだろうと気になった。

このドラマは"多数派"のために作られていないから、必要としていない人はたくさんいると思う。もっと娯楽に寄せて、定番のハッピーエンドで終わってほしい人もいると思う。けれどそういう人はこのドラマの登場人物に感情移入できなくて、刺さらないドラマだと思う...。だからこそ、行き詰まった資本主義の生きづらい社会で苦しむ人にこそ観てほしい、真っ直ぐな気持ちの宿った大傑作。
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