Kaji

新聞記者のKajiのレビュー・感想・評価

新聞記者(2021年製作のドラマ)
3.3
まず、このドラマ制作にはとても期待していました。映画版よかったので。
現実社会での新政権での認諾という回収にもすごく憤りを感じています。

だからこそ辛口で行きたいと思います。もっと面白いドラマになってほしいから。

出てくるキャラクターの葛藤が「家族」に由来していて、それは素晴らしいことですが、報道が担う社会的責任や自死に追い込まれた人物が維持しようとした職業倫理が薄められてるような気がしました。

作られることに意義があったので、面白さや緻密さを少し横に置いてたかなと思います。
内的な動機がある人が善を行い、ない人間が権力構造の中でパワーを使うというのは古すぎる構造というか、「また家族論かよ」と。
また、一般人に近い目線を担う「リョウ」があまりにも無垢というか「聞けば答えがもらえる人」で。彼の純粋さが報道にどう作用していくのか、シーズン2があるならそこら辺を見たいし、内部崩壊が起きた人物たちの再生も大事になってくると思います。

報道の中でも権力に擦り寄る者、独立系メディアの奮闘が現実社会にあったので「手を挙げても当てられない」こと、記者会見で原稿を読むこと、封殺される情報をもっと克明に描くこともできたんじゃないかなと。


このドラマ・題材で何を描きたかったのか。
権力の腐敗なのか、情報の操作なのか、自死に至った人物の無念なのか、冷遇される真相報道なのか、報道倫理なのか、、、、しかしそれはある顕れなので、そこに至る内発的な動機を炙り出しながら哲学を打ち出して欲しかったなと。妙にみんな行儀がいいというか。物足りない。
もしその全てを要素として入れるなら、善のために悪になれるキャラクターを1人入れて、もっっっっとタフでしつこい人、他者のために自分がどんな人に思われてもいいという人物が新聞社側にいて欲しかったと思います。

そういう肝心なビッグビジョンが薄まっている感が否めませんでした。
Kaji

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