たいよーさん

俺の家の話のたいよーさんのレビュー・感想・評価

俺の家の話(2021年製作のドラマ)
4.7
全身がゾワッとするような感覚。まさに長瀬智也のための花道。クドカンここにあり。ドラマでならなければならない意味を感じる。

介護問題を描きながら、プロレスと能を入れてくる器用さ。それらを束ねて綴るメッセージの一貫性。そして、クセを持ったキャラクターによる装飾に、テンポを刻んでかっさらう伏線回収の気持ちよさ。ハマればデカいと言われるクドカン節も、最高傑作に近いのではないだろうか。写し出すリアルと現実に、ユーモアをひと搾り出来る勇ましさが醍醐味。それを、長瀬智也に捧げるようなリリックを効かせているのだから凄い。
そんな長瀬智也も、自身が表舞台から身を引くにふさわしいステージで大いに暴れていたと思う。リングで、能舞台で、そして家で。序盤に漂う介護の難しさと仕事との両立。中盤に差し掛かっていくと、自分との向き合う。そして終盤、とんでもないドラマを精一杯走り抜く。始まった頃には大きく見えていた背中に、いつしか安心感を覚えていた。それこそ、脚本家クドカンとの阿吽なんだと思う。ホントに最後まで「ありがとう」が混同して溢れるドラマだった。

ここで、私の家の話。テーブルを囲み、家族で1話から最後まで見届けた。皆大好きなクドカンの脚本。そして、家族で観ても安心できるユーモアのある笑い。毎週ビリビリと震えるようなドラマで、終わるのが本当に惜しい。何度も繰り返して恐縮だが、これは、クドカンが長瀬智也のために開いた3ヶ月に及ぶセレモニーなのだ。彼を一番輝かせられる人による恋文。今期イチ心の震えるドラマだった。
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