1950〜60年代のアメリカを舞台に、孤児院で育ったエリザベス・ハーモンがチェス界の頂点を目指す物語。
親の愛を信じきれず、孤独が影を落とし続け、酒と薬物を絶てない生活。真っ暗闇を歩き続け、すぐ足元にある穴に転げ落ちそうな生活。
でもチェスには誠実で。薬物に浸らせたのもチェスだけど、彼女を支えてたのも間違いなくチェスだった。
作中、彼女に惹かれる男性は多く、みんな魅力的で色んなものを彼女に与えてくれたけど、彼女を孤独や薬から救ったのはそんな男たちや恋情ではない。チェスと彼女を出会わせた用務員の愛、友人の愛。そしてきっとチェスへの愛。
でも出会う男性たちも、みんなとっても素敵で。
それは恋や欲や友情で繋がる前に、チェスへの愛で繋がれているから。
性も国も人種も超えて、チェスへの真っ直ぐな愛で繋がっている。
それがこの作品のとても素敵なところ。
羨ましくなるほど打算や嫌らしさの無い人間関係とスポーツマンシップ。キレイすぎるくらい。
そして個人的に、ベスの真ん中にあるのは母のこの言葉なのかなと思った。
「男たちは色々教えたがる
賢いわけじゃない
自分を大きく見せたいだけ
指図をしてきても 聞き流せばいいの
自分の思うがままに進めばいいの
強い女にならなくちゃ
妥協が当たり前のこの世の中で 自分を貫くにはね
あなたはあなたよ」
おそらく母親はそれを貫けなかったけれど、
彼女は母の言葉通り、最後まで誰の言いなりにならず、思うがまま生きている。
それがとても清々しい。
あと、ベスの衣装やちょっとしたお店や家やホテルの内装がめちゃくちゃ可愛い。
そこにもときめきっぱなしだった。
ハラハラどきどき展開のテンポも良くて面白かったなー