key0908

今ここにある危機とぼくの好感度についてのkey0908のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

(2月に再放送で観てから書くまでに時間空き過ぎた…!)
NHK土曜ドラマ。「新聞記者」や「孤狼の血」とは違う、情けないほうの松坂桃李が主演。ほんとに演技の振り幅が凄い。

好感度だけで生きてきた、意味あることを全くコメントしない中身空っぽなイケメンアナウンサー神崎は、イケメンの座を若手に奪われ出身大学の広報課に転職。隠蔽体質の大学で、スター教授の研究改ざんに対する内部告発などに巻き込まれていく。

大学の面々のやり取りが、皮肉ありコミカルさありで面白かった。

正論を恐れる上司(渡辺いっけいさん)、
自分がトップなのに理事の顔色を気にして弱腰の総長(可愛いほうの松重さん)、
圧の強い理事たち(特に國村さん、怖ぁ)、
的確なツッコミでお尻を叩いてくれる総長秘書(安藤玉恵さん良かった!)、
変人で暴走する癖アリ澤田教授(池田成志さん)、
地味で静かだけど意思の強いポスドクみのり(鈴木杏ちゃん、身につまされる台詞もたくさん!)。

世の物事の複雑さから逃げたい神崎は、渦中にいるなかで彼らの言葉を聞くたびに流されて、振り回されている。
そんな神崎のポンコツ能天気ぶりや本音などを冷静に、でも少しおどけて伝える伊武雅刀さんのナレーションもメタ的に寓話感を醸し出して良き。

大学経営は資金繰りに困窮していて、研究の現場とはいびつな関係になっている。結局、告発者のみのりを助けることは出来なかった。

みのりの事件を経て、劇的に変わったわけでもない神崎だったけど、後半もまた、事件が起こる。
特に最後の事件は何をオマージュしているか一目瞭然で、NHKの土ドラのセンスは感じた。
教育者として総長のプライドが再び目覚めた第3話は、とても良かった。 

逃げ腰の持論も展開しつつ、徐々に正しい面倒くささにも目を背けなくなっていく感じで、神崎のコミカルさとほっとけ無さを同居させるキャラクターをモノにしていた桃李くんのお芝居に、またも感嘆した。
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